今日は朝から、またしてもご近所さま総出で雪かきでした。もう死にそうです。
先週の大雪もすごかったですけど、今回はそれを上回りましたよね。だって、周囲のお宅を見回すと、カーポートは潰れているし、雨どいは折れているし、屋根のテレビアンテナは無くなっているし・・・とたいへんな被害ですもの。
群馬に来てから約30年、こんな大雪は初めてです。
ソチオリンピック、ノルディックスキー・ジャンプ男子・ラージヒルで、葛西紀明選手が銀メダル獲得。おめでとうございます。41歳ですか。鉄人ですね。
さて、昨日、アンドレイ・タルコフスキー監督の「惑星ソラリス」(1972)をご紹介いたしましたけど、「ソラリス」と来ればこの映画を取り上げないわけにはまいりません。公開された年が近い上に、片やロシア映画、片やアメリカ映画ということで、両作品はライバル視されることが多いですからね。
それが、スタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」(1968)です。
天才と呼ばれるキューブリック監督ですが、彼も最初は普通の映画を撮っていたんですよね。
初期の作品の中では、古代ローマ時代の奴隷の反乱を描いたカーク・ダグラス主演の「スパルタカス」(1960)が好きです。見応えがありました。
それからウラジーミル・ナボコフ原作の「ロリータ」(1962)を監督していますけど、これはたいした事がありませんでしたね。こんなのはロリコン映画ではありません。本物のロリコン映画は、当ブログですでにご紹介した、ブルック・シールズ主演の「プリティ・ベビー」(1978)でっす(と、なぜか鼻息荒く強調w)。
そんなキューブリック監督が真に天才を発揮するのが、「未知への飛行」(1964)の記事でご紹介した「博士の異常な愛情」(1964)と、この「2001年宇宙の旅」と、そして「時計じかけのオレンジ」(1971)という、いわゆるSF三部作においてでした。
このうち「時計じかけのオレンジ」は、刑務所に収監された未来の悪ガキグループのリーダーが、釈放を条件に犯罪を嫌いになる生体実験を受けるというお話でした。
後半は少しダレますが、前半の奇抜な未来ファッションや独特の映像美が光るSF映画の傑作です。こちらもぜひご覧になってくださいね。
話を「2001年宇宙の旅」へ戻しますね。
人類が誕生する前の猿人の時代。
突如出現した石柱状の物体(モノリスという名前なんですって)に触れた猿人たちは、道具を使えるようになる。
時を経て西暦2001年。
月で人工の物体が発見される。それは人類誕生以前からそこにあったもの・・・すなわち地球人以外の何者かが置いていったものということになる・・・
その物体、モノリスが、木星に向けて信号を発する。
木星探査宇宙船ディスカバリー号。
そのコンピューターHAL9000が珍しくミスをする。そして、それをきっかけとして、乗組員たちと敵対するようになる・・・
と、このような物語が続いていきます。
上映時間が長いですし、前半は無重力の宇宙空間はこういう所だと示すシーンがやたら多い上に、リヒャルト・シュトラウスの「ツァラトウストラはかく語りき」(もちろんこれは哲学者ニーチェの著書をヒントにした楽曲ですよ)やヨハン・シュトラウス2世の「美しく青きドナウ」などのクラシック音楽が頻繁に流れるものですから、途中で寝ちゃったよとおっしゃる人が多いです。かくいう私も新宿の映画館で初めてこの作品を観たときには不覚にも寝てしまいました。あはは・・・
しかし、今ではこの作品の格調の高さを、非常に愛しております。
アポロ11号による人類初の月面着陸の前年に公開された本作は、いま観ても少しも古さを感じさせません。
違和感があるとすれば、宇宙ステーションから見た地球の輪郭がくっきりしているところ。本当は厚い大気の層で輪郭が白くぼやけているはずですよね。
それから宇宙服のデザインが実際とはちょっと違うかな?
でも、これくらいですよ、おかしな箇所は。1968年にこんなにクオリティの高い作品を作り得たのはさすがです。素晴らしすぎます。
また、「時計じかけのオレンジ」もそうですが、キューブリック作品に特徴の、冷たく無機質的な未来デザインのインテリアも大好きです。
本作の内容については様々な解釈がされておりますけど、オーソドックスにこれは進化の問題を扱った作品だと思います。すなわち、哺乳類の中でなぜ人間だけが爆発的に脳が発達する進化を遂げたのか? なぜ白くまや象の脳は小さいままなのか? そこには誰かの作為が及んでいるのではあるまいか?
そんな進化の謎からスタートした作品だと思います。
宇宙船ディスカバリー号のコンピューターHAL9000がおかしくなったのも、木星のモノリスに近づいたことで、コンピューターが進化して感情を持った、つまり人間化したからだと思います。人間だからミスをするし、恐れを抱くし、自己防衛のために他人を殺すこともあるというわけです。
本作の原作は一応SF作家のアーサー・C・クラークとなっておりますけど、クラークからはヒントを貰っただけで、中身は完全にキューブリック監督のオリジナルですね。
SF三部作の後のキューブリック監督は、ジャック・ニコルソン主演で「シャイニング」(1980)やトム・クルーズとニコール・キッドマン主演で「アイズ・ワイド・シャット」(1999)を撮りますけど、あまりパッとしませんでしたね。
しかし、「2001年宇宙の旅」は映画史に残る傑作です。2001年はもう過ぎちゃいましたけど、まだ観ていない方は必ずご覧になってくださいね。ちなみにキューブリック監督ご自身は2001年を迎える前にお亡くなりになりました(1999年没)。