11月になりました。今年もあと2ヶ月。早いですねぇ、月日が過ぎるのは。
山本太郎議員の天皇陛下への直訴状問題。事の良し悪しはともかく、さすがに元俳優なだけあってパフォーマンス力はありますわな。
カーヴィーダンスのスタジオが突然の閉鎖。あんなに人気があり、儲かっているはずの会社に、いったい何があったのでしょうか? ま、私は昔から一貫してビリーズ・ブートキャンプ派ですので、どうでもいいですけど。ビリー隊長、今でもファンですからね。がんばってw
さて、秋のB級映画特集の第5弾。今回は邦画を取り上げますね。
まずは「コミック雑誌なんかいらない!」(1986)。
ジョン・レノンの奥さんだったオノ・ヨーコさんから
「あんたなんかクスリやって女抱くだけで、何も生み出さないじゃないのよ」
となじられた内田裕也さんが、何クソとばかりに企画・脚本・主演で作り上げた、たいへんパワフルな作品です(でも、裕也さんって本業はミュージシャンなんでしょう? それがなぜ映画なの? 音楽で勝負すればいいのにねぇ・・・)。
芸能レポーターに扮した裕也さんが、ロス疑惑の三浦和義氏(結局2008年に自殺しちゃいましたけど・・・)、松田聖子と神田正輝の結婚式、山口組と一和会の抗争事件、おニャン子クラブ、豊田商事会長刺殺現場など、1985年から86年当時の話題の現場を突撃取材します。
特にビートたけしさん演じる犯人が豊田商事会長を殺害するシーンはすごい迫力です。
監督は滝田洋二郎。山本晋也監督の助監督を経て、80年代前半に「痴漢電車 百恵のお尻」(1983)や「痴漢電車 聖子のお尻」(1985)などのコミカルなポルノ映画で人気を博した監督です。後に彼は「おくりびと」(2008)で米国アカデミー外国映画賞を受賞します。
ヒロインの美少女役で麻生祐未さんが出演しています。きれいでしたよね、この頃の麻生さんは。NHK朝のテレビ小説「カーネーション」で、麻生さんがおばあちゃん役を演じていたシーンを観ると、しみじみと月日の流れを実感してしまいます。
本作の途中で、裕也さんと麻生さんのカラミのシーンがあって、「え? 麻生さんって脱いでいたの?」とビックリいたしましたところ、よくよく見たらそれは日活ロマンポルノ女優の小田かおるさんでした。髪型が似ているから間違えちゃいますよね。よかった麻生さんじゃなくて。あはは・・・
30年前の世相が題材になっておりますので、今の若い方にはピンと来ないシーンも多いかと思いますけど、それでもこの作品のパワーは伝わるはずです。B級ですけど、日本映画には珍しい、ぶっ飛んだタイプの作品です。機会がありましたら、ぜひご覧になってみてください。
以前、エド・ウッドの映画を取り上げた際、最低映画の条件について語りました。すなわち、最低映画という栄冠(?)を勝ち取るためには、ただ内容がおバカなだけではダメで、そこに何らかの魅力というか付加価値が付いている必要があるのだと。
そういう観点から日本映画の最低映画を選ぶとすると、どの作品になるのでしょうか? 《芥川賞作家》村上龍監督の「だいじょうぶマイフレンド」(1983)は当然その候補に上がりますよね。あるいは《偉大すぎる天才を父に持った》手塚眞監督の「星くず兄弟の伝説」(1985)もいいかもしれません。はたまた《映画って本当にいいものですねぇ》の水野晴郎先生の手になる「シベリア超特急」(1996)もアリでしょう。
そんな中、有力候補として常に名前が上がるのが、「ブルークリスマス」(1978)です。
「スターウォーズ」(1977)や「未知との遭遇」(1978)の大ヒットにより、日本でもSFX映画がブームになっていた時代に作られた、《人気脚本家・倉本聡》のオリジナル脚本によるSF映画ですもの、付加価値としては充分でしょう?
UFOに接近遭遇した人々の血が青色に変る。血が青くなったというだけで、他には何ともないんですよ。凶暴になるとか、病原菌をまき散らすとか、そういう事は一切なし。ただ血の色が赤から青へ変っただけ。それなのに、各国の政府は、青い血の人間を人類の敵として抹殺し始める・・・というお話です。
なぜ青い血の人間をそんなに怖がるのか、そこら辺の説明がまったく無いので、すべてがチンプンカンプン。
それに血液が青くなったとしたら、唇から舌から、とにかく全身が真っ青の不気味な姿に変身するはずなのに、見た目は普通と変らず。ということは、この血液は体内にある間は赤くて、外へ出た途端に青く変色するわけなの? これも変てこりんな設定です。
この数年前、倉本さんにはNHK大河ドラマ「勝海舟」の脚本を降板させられるという事件がありましたので、自分たちと異質な者、異質な才能や人格、ものの考え方を排除しようとする体制側に対する批判を、この映画でおこなおうとしたのかもしれませんけど、それにしても最低映画と呼ばれるに相応しい意味不明な内容でした。
本作の最大の魅力はヒロインを演じた竹下景子さんの可愛らしさ。当時売り出し中のアイドルだった竹下さんのポワンとした表情が実にチャーミングです。一見の価値ある美少女ぶりです。
竹下さんについては「祭りの準備」(1975)のおっぱい論争もお忘れなく。あはは。
また主題歌を、これまた当時売り出し中のロック・ミュージシャン、チャー(char)が歌っています。日本語バージョンはダサいけど、英語バージョンはなかなかいけます。ギターの音色が美しい名曲です(たぶん・・・)。
あと、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」で、使徒かどうか判別する際に、「パターン青、使徒です」という声と共に、画面に「BLOOD TYPE:BLUE」と表示されますが、これは本作の副題から取られたものです。エヴァの監督の庵野秀明さんが、本作を監督した岡本喜八氏の大ファンなものですから、借用させてもらったそうです。
以上、日本映画界の最低映画有力候補作品「ブルークリスマス」について語ってまいりましたが、最後はいよいよ本命作品のご登場です。
それこそが《東宝創立50周年記念映画》にして、
数々の黒澤映画の脚本を担当した《名脚本家・橋本忍》率いる橋本プロが、大ヒット作「砂の器」(1974)、「八甲田山」(1977)に続いて贈る《超大作映画》であり、
しかも《橋本忍御大自らが監督》し、
あまりの出来のひどさに《公開1週間で打ち切り》となり、
その後もソフト化されることなく(東宝が恥ずかしがって出そうとしなかった?)、長いあいだ文字通り幻の映画となっていた、
橋本忍(以下、面倒くさいので忍と表記する)の輝ける映画人生をどん底へ突き落とし、終止符を打った問題作、
「幻の湖」(1982)です。
「幻の湖」については、雑誌「映画秘宝」のライター達がさんざん面白おかしく書き立てましたし、ネット上でもさかんに笑いものにされておりますので、御存知の方も多いかと思いますが、いちおう私の理解できる範囲で内容をご説明いたしますね。
今回はネタバレありです。そうじゃないと何も説明出来ませんものですから。
とは言うものの、私の解説を読んだところで、何が何やら分からないとは思いますけど。だって実際にこの映画を観ても理解不可能なわけですから。あはは・・・
琵琶湖沿いの道路を愛犬のシロと一緒にジョギングする若い女(演じるのは本作がデビュー作となる南條玲子さん。ズバリ私の好みのタイプです)。
彼女は雄琴のソープランド(当時はトルコ風呂と呼ばれていた)に勤めるソープ嬢である。そのお店の女の子は皆「ねね」だの「淀君」だの戦国時代の女性の名前を源氏名にしていて、彼女の源氏名は「お市」。織田信長の妹で浅井長政に嫁いだ《お市の方》の名前である。
このお店にはアメリカ人のソープ嬢もいて、彼女ローザはジェット機の爆音を耳にすると
「あれはファントムではなく、イーグルだ。イーグルはすでに実戦配備されている」
と意味不明の事を口走る。
ここらへんからすでにおかしいのですけど、そもそも主人公の職業をソープ嬢に設定するところからして異常です。なぜなら、そうしなければならない理由が無いからです。彼女が普通のOLであってもストーリー上は何の変更もありません。ただ単に忍がソープ嬢が好きだったということでしょうか? あるいは南條玲子さんの裸が見たかったとか? それ以外の理由が考えられないのですけど・・・
お市はシロとのジョギングを楽しみにしていたが、ある日そのシロが何者かによって出刃包丁の角で撲殺されてしまう。
どうやら犯人は作曲家の日夏だとつきとめたお市は、シロを殺した出刃包丁を持って、東京の日夏の事務所へ乗り込む。もちろんお市は相手にされないばかりか、逆に警察を呼ばれる始末。
ここら辺のお市の行動はかなりいっちゃってます。もしかしたら忍には馴染みのソープ嬢に付きまとわれて怖い思いをした経験があるのかもしれません。当時、ソープ嬢の愛人がいて、その娘との別れ話でもめていたんじゃないの? どうよ、忍?
すっかり落胆したお市でしたが、ソープを辞めて東京へ行ったローザと偶然、街中で再会する。ローザは実はアメリカCIAの諜報部員だった。日本人の習性を探る為、しばらくソープで働いていたのである(・・・って、もう開いた口がふさがりませんでしょう? 何を考えてるんだ、忍)。
ローザは諜報部のコンピューターで日夏の情報を調べてくれる。そこで判明したところでは、日夏は毎週日曜日に駒沢オリンピック公園でジョギングをするという。
日曜日、オリンピック公園で待ち受けるお市。そこへ現れる日夏。お市は先行する日夏を追いかける。ここからお市と日夏の長いジョギングシーンが始まります(なぜダラダラと長時間こんな安っぽいスポ根ドラマまがいのものを観せられなきゃならないのでしょうか?)。
いつの間にか、お市の中では、ジョギングで日夏に勝つことがシロの復讐になるという事になってしまっているらしく(何、その論理?)、懸命に日夏に追いつこうとしますが、後ろから変な女がついて来ているのに気づいた日夏はペースを上げます。そのペースアップに付いて行けないお市。お市は敗北感を抱いて雄琴へ戻ります。
雄琴に戻ったお市は、琵琶湖湖畔で笛を吹く謎の男・長尾(実はNASAに勤務する宇宙飛行士ですって。小学生が書いた物語じゃあるまいし、もう勘弁してって感じ)から、戦国時代、織田信長に殺されて琵琶湖に沈められた《お市の方》の侍女みつの話を聞いて、シロを失った自分と同じ境遇だと思ったり(どこが?)、若い銀行員(演じるのは長谷川初範さん)と恋に落ちたりします。
銀行員と結婚するためソープを辞めることを決心したお市(それはいい事だ)。
ところが、その最後の勤務日に、日夏が客としてやって来たから、さあ大変。
「琵琶湖に沈んだ女の恨み節を書こうと思って来たんですよ」
のんきにそう言って笑う日夏に
「東京の仇は琵琶湖でうつ!」
とばかりに包丁を突きつけるお市。
驚いた日夏はとうぜん逃げ出します。その日夏を黒い長襦袢姿(!)で追いかけるお市。ここからまた二人の長いジョギングシーンが始まります。
包丁を持った気のふれた女に追いかけられているんですよ。普通は誰かに助けを求めたり、近くの商店へ逃げ込んで保護してもらったりするものではありませんか?
ところが、この日夏さんときたらそういう事をする気は一切無く、追いかけてくるのがいつぞやのオリンピック公園の女だと気づくと「あいつになら勝てる」と余裕をかます始末。
対するお市のほうも「地元ならこっちのもんよ」とこれまた自信満々。
アホらしすぎて脳が溶けそうです。
二人の長く苦しい(観ている方も苦しい)ジョギング対決の末、遂にお市は琵琶湖大橋の途中で日夏を追い越す。その瞬間、お市は
「勝ったわよ、シロ!」
とガッツポーズ(はぁ?)。
そして後ろを振り向くなり
「琵琶湖に沈んだ女の恨みがおまえに分かるか!」
と絶叫しながら包丁で日夏をグサリ。
と、ここで急に画面が変って、スペースシャトル発射(ええ?)。
宇宙に出た長尾は、琵琶湖上空の無重力空間に笛を置き、
「たとえ琵琶湖は無くなっても、太陽系が消滅する45億年後まで、笛は幻の湖の上にある」
もうさっぱり意味が分からないんですけど!
いかがでしたか? このような作品が《東宝創立50周年記念映画》として、日本映画界を代表する一流スタッフの手により、大真面目に作られたのですよ。すごい話でしょ?
この異次元にトリップするような名作(?)、現在はDVDになっておりますので、興味のある方はご覧になってみてください。もしかしたら日本映画の奥深さが堪能できるかも・・・です・・・