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Channel: 行政書士ふじまるの趣味のページ
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狐狸庵VSマンボウ

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 みのもんたさんの次男が他人のカードを使って金を引き出した窃盗容疑で逮捕されたそうで・・・
 何でしょね、これは?
 彼は日本テレビの社員で、しかもみのさんの息子なんでしょう? お金なら唸るほどあるんじゃないの? それなのに、なぜこんなバカな事をしたのでしょうね?
 別にみのさんが悪いわけじゃないけど、これでみのさんはレギュラー番組をぜんぶ降板するハメになるのでしょうね。ま、資産はたっぷりあるのでしょうから、これを機に芸能界を引退し、残りの人生は自分の好きな事だけをして暮らすというのも悪くないでしょうけど。
 
 以前、遠藤周作先生の「怪奇小説」について書いた記事の中で、雑誌「ロードショー」の古い号をご紹介いたしました。
 その中にあった懐かしいグラビアを、ここで少しお見せいたしますね。
 まずは「ナタリー・ドロンとアニセー・アルヴィナ」という記事でお馴染みの、我らがナタリー姉さん。
 
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 いやー、実におきれいです。まさに花の精のようです。惜しげもなくさらけ出した太ももがたまりません。ごっくん。ハァ、ハァ。
 
 次に当ブログの記事「ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー」(1974)でご紹介したスーザン・ジョージ(左)と「ポセイドン・アドベンチャー」(1972)で一躍世界のアイドルとなったパメラ・スー・マーティンちゃん(右)・・・と言っても誰も知らないでしょうけど・・・当時は人気あったんですよ・・・
 
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 スーザン・ジョージ主演の映画「マンディンゴ」(1975)のグラビアが載っておりました。スーザンが黒人奴隷の子供を出産する大農園の若妻を演じる作品です。公開時に観たのですけど、たいへんに衝撃的でした。
 
イメージ 3
 
 それから、我らがアニセー・アルヴィナちゃん主演の「続フレンズ/ポールとミシェル」(1973)のグラビアもありました。
 残念ながらアニセーちゃんは2006年にお亡くなりになりましたが、私の中では永遠のアイドルです。アニセーちゃん、かわゆし!
 
イメージ 4
 
 
 ・・・ということで、前フリはこれくらいにして、今日の本題に入らせていただきますね。
 
 遠藤周作先生つながりなんですけど、上記の「ロードショー」を読んでいた中学生の頃のワタクシはまた、遠藤さんのエッセイ「ぐうたらシリーズ」にも夢中になっておりました。そして、狐狸庵(こりあん)先生(遠藤さんの別名)の巧みな文章、言葉によるくすぐり、皮肉な言い回し、に魅了されておりました。
 
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 その頃、ユーモラスなエッセイを得意とする作家が、もう一人いらっしゃいました。それが「どくとるマンボウシリーズ」の北杜夫先生です。
 
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 遠藤先生と北先生は親友同士であり、よくお互いのエッセイに登場し合っていたのですが、そのお二人がいよいよ1冊の本で対決するというので、両先生の大ファンだった私は、すぐさま本屋へと直行いたしました。
 そこで購入したのが「狐狸庵VSマンボウ」(講談社)です。
 
 三島由紀夫が、彼の著書「文章読本」の中で、「文章が上達するコツは名文をたくさん読むことだ」と書いておりましたけど、私も皆さんの文章力アップに少しでもお役に立てばと思い、これまでも当ブログの中で、様々な名文をご紹介してまいりました。
 よく考えてみれば、遠藤先生や北先生の文章が、文章上達ためのもっとも即効性のある薬になるのではないでしょうか?
 
 今回ご紹介するのは、「狐狸庵VSマンボウ」収録の、Sウィスキーの広告として使われた文章です。
 この文章を書くことになったいきさつを、北先生が同書収録のエッセイ「狐狸庵先生にはかなわぬこと」の中で、こう書いています。
 日頃から遠藤さんの悪戯に引っかかって悔しい思いをしていた北さんは、いつか遠藤さんをギャフンと言わせてやるぞと復讐の機会を虎視眈々と狙っていた。と、そこへSウィスキーから、遠藤さんと北さんのところへ、相手の酒癖などを批評するページの依頼が来たものだから、北さんは勢いこんで引き受ける。
 
 ・・・その文章の中で、私は滅茶々々に氏をけなした。つまり、酒のことなんか何一つ知らず、飲めば飲んだで下品に騒ぎまわるだけだという意を、せい一杯オーバーに書きたてたのだ。
 ところが、広告が出て、仰天した。氏もどうせこちらの悪口を書いてくると思いこんで、それ以上の雑言をがなりたてたのに、氏はその逆手に出たのである。北君の酒は実に上品で立派で乱れたところを見たことがない、などと。その皮肉の効果が実に見事なのだ。
 いわば私はガキのように棒切れをふるって相手にシャニムニ打ちかかるのを、名人上手に軽くいなされたような、実にみっともない印象だけを読者に与えたにすぎなかった・・・
 
 それでは、遠藤先生と北先生の見事な文章をお読みください。二つ続けて読むと笑えますよ。
 私はこれを読んで、遠藤さんのような文章が書けるようになりたい、と激しく憧れたものでした。
 文章力をアップさせたいとお思いの方は、ぜひこの「狐狸庵VSマンボウ」を読んでくださいね。
 
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 聖者の酒 ● 遠藤周作
 
 私は今日まで数多くの知人と酒を飲んだが、北杜夫氏ほど酒品のある人を他にしらない。
 温厚にして物静かで、育ちのよさを現す顔にそこはかとなき憂愁を漂わす氏は酒席にあっても決して姿勢をくずすことはない。声をあらげることはない。大言壮語することはない。
 私たちのように僅かな酒でたちまち天にのぼる気持ちになり、千人力だと錯覚し、躁病患者のごとく騒ぎまわりわめき、怒鳴る連中と違って北氏はゆっくりと、規則正しく、酒を口にはこび、たえず微笑みを口から消さず、静かな口調で話をする。我々は君子の酒の飲み方はけだし、北氏のごときを言うのであると思い、氏と酒をくみかわす時は、孔子、孟子、二宮尊徳先生と酒を飲むような悦びを感じるのである。そして北氏と酒席を共にした我々はいつもそのあとで呟くのである、「ああ、彼と、もう一度、飲みたい。彼の酒は静かだ」と。
 まこと、静謐(せいひつ)と温厚は北氏の人柄をあらわす二つの言葉である。氏はいつも静かである。言葉数も少ない。氏の最も嫌う酒席での悪徳はわめいたり、騒いだりすることだと我々、友人は知っている。我々は氏と飲む時でも持前の性格からすぐ騒ぎまわるのだが、氏がそれに対して怒ったことを一度も見たことはない。人は人、我は我という境地でゆっくりうまそうに酒を飲んでいる。にもかかわらず、決して仲間からはずれることはない。氏が好んで色紙に書く言葉は「閑寂と寡黙」とであると耳にしたことがある。
 最近、酒徒番付などと称し、徒に酒量を誇る傾向があらわれたが、酒は何よりも酒品である。その意味で北氏こそ本当の酒の君子と言うべきだろう。
 
 
 神さまの舌 ● 北杜夫
 
 遠藤氏は神のごとき人物である。いや、神さまそのものである。なんとなれば、人をたぶらかす。
 私もホラはふくが、私のはすぐホラとわかるかわいいホラで、遠藤氏のホラは、本当に人をだまくらかす深遠なる術策に満ちている。私も幾十度となく見事にだまされ、どれほど迷惑したかわからない。
 遠藤氏は、自らハイ・ソサエティに属するとおっしゃられ、北めはロウ・ソサエティ(もちろん世界中にこんな言葉はない)だから教えてやるが、例えば、俺の飲む酒はワインなら1850年産のかくかく、ウィスキーならかくかく・・・とお告げをたれたまう。それはたしかに遠藤氏は知性にあふれた博識の貴族であらせられるが、こと酒に関するかぎり、こんなになんにも知らず、味もわからない人は全世界に稀である。葡萄酒の年代が1年違って、どういうことになるかも、まるっきり御存知ない。ただひたすら古ければよいと思いこんでいるらしい。そこで、ぶっこわれかけたびんにカビをぬり、レッテルも汚して文字もよめなくし、これに、水と赤インクをまぜ砂糖と塩と酢で味をつけ、トマトケチャップなども入れ、これは十八世紀のボルドーです、とうやうやしく差しだすと、遠藤氏は満悦してガブリガブリと飲みほし、いいやなるほど、おれはフランスでは主に十七世紀と十九世紀のボルドーを飲んでおったが、これはたしかにその中間の味だ、などと恍惚となさっている。常人ならすぐわかるSウィスキーの味すら、とてもわかるもんじゃない。
 私は無学な乞食だが、こと酒に関しては、カストリからウィスキーからコニャックから、一応は味わえる。いくらハイ・ソサエティの神さまだろうが、かくの如き遠藤氏と、お互いに酒を語るなんてこと自体大屈辱である。

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