私がいま住んでいる場所は、群馬県高崎市。高崎市の隣が安中市です。安中市は、昨年のNHK大河ドラマ「八重の桜」の主人公・新島八重の夫で同志社大学創始者である新島襄の出身地ということくらいしか話題にならない地味なところですけど、それでも最近テレビを観ているとやたらに「アンナカ」という言葉が飛び交うものですから、何だかドキッとしてしまいます。「え、安中?」とか思っちゃってさ。
群馬はこのところずっと暖かいですけど、昨日(23日)私が小学生時代を過ごした北海道網走市では何とビックリ雪が降ったとか。狭い狭いと言いながらも、やはり日本は広いんですね。こちらはTシャツ姿でOKなのに、あちらは雪ですものね。あはは。
その網走での小学生時代ですけど、小学校も高学年になってくると、それまでウルトラマンや仮面ライダーにしか興味の無かった我々男子生徒が急に色気づき始め、目線がアイドルへ向かうようになります。折しも、私が小学校高学年だった1970年代初めは、日本が第一次アイドルブームに沸いた時代でした。
当時はインターネットなんかありませんからね、私たちは毎月せっせと雑誌「明星」や「平凡」を買って、アイドルの情報を仕入れたものです。
上の写真は当時の雑誌「明星」の表紙です。真ん中が郷ひろみさん。向かって左が浅田美代子さん。右がアグネス・チャンさんです。3人ともとっても可愛いですよね。
他にも《白雪姫》天地真理さん。《私の彼は左利き》麻丘めぐみさん。《瀬戸の花嫁》小柳ルミ子さん。《シンシア》南沙織さん・・・などなど、それまでは存在しなかった、すごくフレッシュな、ニュータイプのアイドルが続々と登場いたしました。
そして私たちは、「明星」や「平凡」の付録だった彼女たちのポスターを、壁や天井にベタベタ貼りまくっていたのです。
また当時は《欽ちゃん》こと萩本欽一さんが司会をしていたテレビ番組「スター誕生!」が大人気でして、日曜日の午前中といえば私たちは欠かさず「スタ誕!」を観ておりました。
この「スタ誕!」から《花の中三トリオ》森昌子さん・桜田淳子さん・山口百恵さんを初めとする数々のスターが誕生し、1970年代後半の日本は第二次アイドルブームで沸き立つことになります。
そんなアイドル全盛期の時代に思春期を過ごしたワタクシが最もビビッときたアイドルが、今回取り上げるキャンディーズなのです。
上の写真でキャンディーズのメンバーをご紹介いたしますね。向かって左から《ミキちゃん》こと藤村美樹さん、《ランちゃん》こと伊藤蘭さん、《スーちゃん》こと田中好子さんです。
スレンダーな正統派美人のミキちゃんに、少しぽっちゃりで愛くるしいスーちゃん、そして健康的なお色気ムンムンのランちゃん・・・ね、可愛いっしょ?
私がキャンディーズを最初に観たのは、おそらくザ・ドリフターズの「8時だヨ!全員集合」でだったと思います。キャンディーズの3人がドリフのメンバーと一緒にマット運動など体操のコントをしていたシーンを、よく憶えておりますから。
この頃のキャンディーズは、まだまだマイナーな存在でした。
そんなキャンディーズが一躍スターの仲間入りしたのは、1976年に発表した「春一番」の大ヒットによってでした。
一般的にはこの前年に発表した「年下の男の子」のヒットによりキャンディーズはメジャーになったと言われておりますが、私の印象ではやはり「春一番」のヒットが大きかったと思います。この曲がヒットしたとき、私なんぞは
「あ、昔よくドリフのアシスタントをしていたキャンディーズが、遂に表舞台に飛び出してきたか」
と思いましたもの。
もっとも「年下の男の子」がキャンディーズの代表曲である事実は揺るぎませんけど。
「春一番」以降は、1978年の解散まで、時代はキャンディーズのものでした。
キャンディーズの魅力は、まず何と言っても3人の可愛らしさ。美しさ。
同時期に活躍して、ライバルのように思われていたピンク・レディーは、キャンディーズと一緒に並ぶと、やたらに体がでかかったですからね。それに比べてキャンディーズの3人は、小柄で、粒が揃っていて、まるでお人形さんみたいにキュートでした。
魅力の2つ目は、彼女たちのカンの良さ。芸達者さ。
もともとドリフターズの番組でギャグのセンスを磨かれた3人でしたから、他の可愛いだけのアイドルとは違い、彼女たちにはお笑いのセンスと言うか、バラエティ番組における《腕》がありました。
そんなキャンディーズのバラドルとしての魅力が爆発した番組が、伊東四朗さん司会の「みごろ!たべごろ!笑いごろ!!」です。
面白かったなぁ、「みごろ!たべごろ!笑いごろ!!」。下品で、安っぽくて、B級感に満ち溢れていましたけど、何か好きでした。
電線音頭(作詞・田村隆、作曲・不詳)なんか懐かしいです。《ベンジャミン伊東》に変身した伊東さんが
「人の迷惑顧みず、やって来ました電線軍団」
とやると、銀ピカのスーツを着た小松政夫さんがマイク代わりのオタマ片手に飛び出してきて
「たいへん長らくお待たせいたしました。四畳半のザッツ・エンターテインメント。総合司会の小松政夫でございましゅ。歌は流れるあなたの胸に・・・」
としゃべり始め、その後キャンディーズたちがセットの中央に置かれた炬燵の上に上がらされて
「チュチュンがチュン」
と電線音頭が始まるわけです。
チュチュンがチュン あ、そーれ チュチュンがチュン あ、そーれ
電線に(あ、そーれ)
雀が三羽とまってた(あ、よいしょ)
それを猟師が鉄砲で撃ってさ(はっ)
煮てさ(はっ)
焼いてさ(はっ)
食ってさ
あ、ヨイヨイヨイヨイ
オットットット
あ、ヨイヨイヨイヨイ
オットットット
この電線音頭は当時一大ブームとなりまして、みんな学校で真似したものです。
デンセンマンなる謎のヒーローまで生まれましたね。
それからキャンディーズと伊東四朗さん、小松政夫さんによる「悪ガキ一家の鬼かあちゃん」コーナーも大好きでした。
伊東家の3人の悪ガキに扮したキャンディーズが登場する際には
「まずは例のワンパターンから。ラン、スー、ミキ。ゴー。ズンズンジャカ、ズンズンジャカ。ズンズンジャカ、ズンズンジャカ。うーん、食べごろよォ♡」
と踊るのがお決まりでした。
そして5人での会話中に、鬼かあちゃん役の伊東さんがちょっとランちゃんを貶すようなセリフを言うと、すぐさまランちゃんが
「それじゃ私には出来ないとおっしゃるのですか、《いのう四朗》さん」
と食ってかかって、ここからまたいつものワンパターンが始まるのがお決まりでした。
伊東「何なの、その《いのう四朗》って?」
ラン「うっ。ラン、悔しい」(とテーブルに顔を伏せる)
そこへスーとミキが駆け寄り、遥か彼方を指さしながら
スー「ラン、泣かないで。私たちには明日があるじゃない」
ミキ「そうよ、ラン。世界のキャンディーズになるまで、涙は禁物よ」
スーとミキ「さあ、ラン、笑って」
するとラン顔を上げて、にっこり微笑み
「うん♡」
小松「はぁー、クサい。クサいわねぇ、もう」
毎週観ても、ちっとも飽きなかったなぁ・・・本当に好きでした、このコーナー。
そして、このコーナーから小松政夫さんの「しらけ鳥音頭」も生まれたんですよね。当時の風潮はズバリ《しらけ》。まさにタイムリーな名曲でした。
キャンディーズの魅力、ラストはアーティストとしての魅力です。
単なるアイドル歌手と違い、キャンディーズは自分たちで自分たちをプロデュース出来る、すなわち本質的にはアイドルというよりアーティストでした。そうじゃなければ人気絶頂の最中に突然
「普通の女の子に戻りたい」
と言って引退宣言などしませんわな。
彼女たちのアーティスト性は曲にも表れ、吉田拓郎さんに作曲を依頼した「やさしい悪魔」や「アン・ドゥ・トロワ」(作詞は共に喜多条忠氏)は、アイドルが歌う歌謡曲というより完全にニューミュージックの楽曲に仕上がっております。
アン・ドゥ・トロア 踊りましょうか
アン・ドゥ・トロア 炎のように
ひとは誰でも一度だけ
すべてを燃やす夜が来る
アン・ドゥ・トロア 今がそのとき
ためらわないで
ためらわないで
すなわちキャンディーズは、同時代の山口百恵さんや、少し後の松田聖子さん同様、単なる操り人形ではなく、アーティスト性を持ったアイドルなのでした。そして私たちもそこに激しく惹かれたのです。おれたちのキャンディーズは本物なんだぞ、と思って。
コンサート初めにキャンディーズを紹介するお決まりのくだり。
バックバンドの兄ちゃん「C・A・N・D・I・E・S!」
ファンの野郎ども 「C・A・N・D・I・E・S!」
バックバンドの兄ちゃん「スーパー、スーパー、スーパー、キャンディーズ!」
ファンの野郎ども 「スーパー、スーパー、スーパー、キャンディーズ!」
ここでキャンディーズ登場。歓声。絶叫。飛び交う紙テープ。
我らのキャンディーズは1978年4月4日、人気絶頂のなか惜しまれつつ引退します。
引退後、ランちゃんがまず女優として復帰。映画「ヒポクラテスたち」(1980)などの作品に出演します。現在は水谷豊さんの奥さんです。
ミキちゃんは、一度歌手として復帰しましたが、一般人と結婚後は家庭の主婦になりました。
スーちゃんも女優として復帰し、映画「黒い雨」(1989)などに出演いたしましたが、残念ながら2011年に病気でお亡くなりになりました。スーちゃんの夫は夏目雅子さんのお兄さんでしたから、スーちゃんも夏目さん同様、(義理の)おばあちゃんが住む群馬県沼田市に何度かやって来たのでしょうか。
スーちゃんの葬儀のテレビ中継で久しぶりにミキちゃんのお姿を拝見いたしましたけど、すっかり老け込んでいらっしゃいましたね。知らぬ間に時が流れたのですねぇ・・・
自民党幹事長の石破茂さんもそうですけど、今でもキャンディーズを愛して止まないファンは大勢います。かくいう私もその一人です。
キャンディーズは最高でした。
彼女たちを超えるアイドルは未だ存在しておりません。
私は一生キャンディーズを愛し続けます。
キャンディーズ以外のアイドルは考えられません。
・・・とか言いながら、実は私は《ためらいライライ、ラブレター♪》の河合奈保子ちゃんも大好きなのよね。あは♡