マレーシア航空機はまだ見つからないんですよね。一体どこへ消えたんでしょうか? まったく奇妙キテレツな話です。
当初は事故が疑われておりましたが、最近では機長もしくは副機長の関与によるハイジャック説が有力なようで、いずれにせよ一刻も早く無事に発見されることを願うばかりです。
ひと昔まえなら、こういう事件が起きるとすぐに「これはUFOの仕業だ」とか、「いやいや、新たなバミューダトライアングルに違いない」などと《トンデモ学者》や《トンデモ評論家》たちが騒いだものですけど、最近そういうのはもう流行らないんですかね?
さらに古く私たちの世代になると、「これは世界征服を企む謎の秘密結社の仕業にちがいない」と考え、「ジェームズ・ボンドみたいなスパイがすでに捜査を開始しているはずだ」などと空想を膨らませてしまいます。
なにしろ、私たちが子供の頃は東西冷戦の時代であり、映画「007シリーズ」やテレビ「スパイ大作戦」などの大ヒットにより、我々はスパイという存在に強い憧れを持っておりましたからねぇ。そういえば「サンスター・スパイ手帳」という大ヒットグッズもありましたね。水に溶けるメモ・・・懐かし・・・
そういうわけで、春休みにオススメの名作映画特集の第2回目である本日は、スパイ映画の最高傑作「007 ロシアより愛をこめて」(1963 旧タイトルは「007 危機一発」。この「一髪」をあざとく「一発」に替えたタイトルを考案したのは、映画評論家の水野晴郎さんだそうです)を取り上げます。
「007 ドクター・ノオ」(1962 旧タイトルは「007は殺しの番号」)に始まる007シリーズは、殺人を許可されている00ナンバーのイギリス諜報部員007ことジェームズ・ボンドの活躍を描いた物語です。
ここで「007」を、今の若い方は、英語での読み方と同じように「ダブル・オー・セブン」と読まれたかと思います。しかし、私の世代では「ゼロ、ゼロ、セブン」という読み方の方に親しみがあります。映画評論家の淀川長治さんは(わざとでしょうけど)「ゼロ、ゼロ、ナナ」と読んでいらっしゃいました。結局、日本語でどう読もうと構わないということですね。
で、「007 ロシアより愛をこめて」の内容はと言いますと、第1作目で同志ドクター・ノオを失った秘密結社「スペクター」の首領が、その復讐としてボンドにハニー・トラップを仕掛け殺そうと企むという、イマイチよく分からないお話なんですけど、ただトルコのイスタンブールからアガサ・クリスティの小説にも使われたオリエント急行に乗ってパリへ向かうという舞台設定が、何とも豪華でロマンチックで素敵でした。
ホント、本作と第3作目である「007 ゴールドフィンガー」(1964)は、とっぴょうしも無いストーリーながら妙にリアリティがあって、高級感に溢れていて、丁寧に大真面目に作られていて、とても良質な大人のためのおとぎ話になっておりました。
また、「ゴールドフィンガー」に登場したボンドカー、アストンマーチンDB5がカッコ良かったですよね。
ボンドカーと呼ばれる車はシリーズを通して何台か出てまいりましたけど、アストンマーチンDB5が最高でした。これこそがボンドカーです。
・・・えー、話を「ロシアより愛をこめて」に戻しますね。
主演のジェームズ・ボンドを演じたのは、ショーン・コネリー。現在までに6人の俳優がボンドを演じておりますけど、初代のコネリーを超える人はまだ現れておりません。
タフで、大胆で、ず太くて、欲望をギラギラさせていて、人殺しも平気そうな面構えをしているコネリーが、ボンドにはピッタリでした。他の役者が演じるボンドは線が細すぎる!
あと、テレビ放映時のコネリーの吹き替えは、若山弦蔵さんで決まりですね。
ボンドを付け狙うスペクターの殺し屋を演じたのが、ロバート・ショウ。「スティング」(1973)、「サブウェイ・パニック」(1974)、「ジョーズ」(1975)・・・と私が中学生のころ大活躍していた俳優です。おっと、私が最も好きな女優、ジャクリーン・ビセット主演の「ザ・ディープ」(1977)にも出演していましたね。ジャクリーンのポッツン乳首以外はどうでもいい映画でしたけど。あはは。
渋くて、逞しくて、狂気を孕ませていて、大好きな役者さんでした。早世なさったのが誠に残念です。
それから、密かにスペクターの一員になっていたロシア(旧ソ連)の女大佐を演じたのが、ロッテ・レーニャ。映画「三文オペラ」(1931)などに出演したオーストリアの舞台女優です。日本の女優さんに喩えると吉田日出子みたいな人です。つまり芸術家ですね、彼女は。
あと、チェスの名人でもあるスペクターのナンバー5を演じた役者さんは、私の大好きなテレビドラマ「謎の円盤UFO」でドクター・ジャクソンを演じておりました。
しかし、007シリーズといえば、何と言ってもボンドガールと呼ばれる美女たちですよ。
本作のヒロインであるボンドを誘惑する指令を受けたロシアの女スパイを演じたダニエラ・ビアンキは、歴代最高のボンドガールと称されております。私もまったく同意見です。ダニエラちゃん、最高ですう・・・ハァ、ハァ・・・
ロシアから奪った暗号解読機レクターを持ってボンドとダニエラが、オリエント急行に乗って西へ向かい、途中で列車を降りた二人に敵のヘリコプターが、そして敵のボート軍団が襲い掛かります。ハラハラドキドキの大活劇です。面白いですよ。ぜひご覧になってみてください。
今回はこれで終わりでもいいんですけど、ついでだからもう少し・・・
さて、先程ボンド役はショーン・コネリー以外には考えられないという趣旨の話をいたしましたが、どうしてもあと一人だけ選ぶとすれば、ロジャー・ムーアとなります。
ポール・マッカートニー&ウイングスが主題歌を担当し、「ある日どこかで」(1980)のジェーン・シーモアがボンドガールになった「007 死ぬのは奴らだ」(1973)から3代目ボンドを演じることになったロジャー・ムーアは、それまでのコネリーのマジで重いボンドとは違い、ダンディで品が良くてちょっとおとぼけな軽めのボンドを創り出しました。
そして、ムーアがボンドを演じた「007 私が愛したスパイ」(1977)、「007 ムーンレイカー」(1979)、「007 ユア・アイズ・オンリー」(1981)の3作品の頃、007シリーズは最も華やかで最も娯楽性に富んだ時期を迎えます。スタントマンによるアクションシーンは究極のレベルに達し、世界の至る国、至る地域を舞台にする007作品は、一種の豪華な観光映画の様相を呈していました。
この3作品の中で、私の最もお気に入りなのが、「007 ムーンレイカー」です。「スターウォーズ」(1977)、「未知との遭遇」(1978)の大ヒットにより世界的なブームとなったSFX映画の影響を受けて、遂にボンドは宇宙空間へ(!)飛び出します。
ムーンレイカーと名づけられたスペースシャトルが何者かに奪われる。その調査を開始したボンドは、スペースシャトルを作っている会社のオーナー、ドラックスが怪しいと睨む。ドラックスは宇宙ステーションから地球へ毒薬入りカプセルを撃ち込み、人類をいったん地球上から絶滅させた上で、自分たち一派が新しい人類の祖になるという野望を抱いていた・・・
この作品でまず素晴らしいのは冒頭のスカイダイビングシーン。
007映画には冒頭に《つかみ》としてちょっとしたアクションシーンがあるのがお約束でして(「私を愛したスパイ」では崖からの大ジャンプ。「ユア・アイズ・オンリー」ではヘリコプターにつかまったまま空を飛ぶ)、本作でボンドはパラシュート無しで飛行機から突き落とされます。
そうなってもボンドは慌てること無く先に落ちた敵に追いつき、彼のパラシュートを奪うのですけど、これら一連のシーンが現在のようなCGによる映像ではなく、本当にスタントマンが飛んで撮影しているので、すんごい迫力です。劇場で初めてこのシーンを観たとき、驚いた私は思わず「スーパーマンみたい!」と叫んでしまったくらいですもの(恥)。
ドラックスを演じるのは、マイケル・ロンズデール。「ジャッカルの日」(1973)で暗殺者ジャッカルを追い詰める刑事役だった人です。品があって、不気味で、私は好きな役者さんです。
それから、おかっぱ頭に着流し姿の、まるで都はるみさんと「浪花恋しぐれ」をデュエットしたときの岡千秋さんみたいな東洋人が、ドラックスの手下として登場します。
好きですね、007映画は、こういう東洋人キャラが。
ゴールドフィンガー(演じたのは「パリは燃えているか」(1966)等で有名なゲルト・フレーベ)にも、山高帽を手裏剣のように使うハロルド坂田さん演じる東洋人の手下がおりましたものね。
ドラックスの手下といえば、リチャード・キール演じる《ジョーズ》が、「私を愛したスパイ」に続いて再登場いたします。
でも、今回の《ジョーズ》は、何だか可愛くていい奴です。《ジョーズ》の純愛物語が観ていて微笑ましいですよ(笑)。
そして、ボンドガール。メインのボンドガールであるロイス・チャイルズもいいけれど、私の好みは断然ボンドを案内するヘリコプターのパイロットに扮したコリンヌ・クレリーです。
映画「O嬢の物語」(1975)のヒロインを演じたセクシー美女です。大ファンです。じゅる。
イタリアのベニスから、ブラジルのリオのカーニバル、さらに宇宙へとボンドと一緒に贅沢な旅が出来るこの作品は、大オススメです。ぜひご覧になってみてくださいね。
007映画であと付け加える事と言えば・・・ボンドの上司「M」を演じたバーナード・リーが貫禄があって素敵でした。
「Q」役のデズモンド・リュウェリンもいい味を出していました。
そして、ロイス・マクスウェル演じるMの秘書マネーペニーとボンドの毎度のやり取りが大好きでした(笑)。