ようやく春らしい暖かさがやって来ましたね。
それでも去年の今ごろ書いた記事(湯浅真沙子「秘帳」)を読み返しますと、上野の桜が満開だったそうですから、今年はやはり寒いのでしょうね。北海道や東北はついこのあいだ大雪でしたしね。
4月になると消費税率が8%になります。
また、4月9日でウインドウズXPのサポートが終了いたします。皆さんの中でXPをお使いの方は、もう新しいパソコンをご用意なさったでしょうか? 私は買いました。
消費税は上がるし、色々と出費がかさみますなぁ・・・国がデフレから脱却するためには、我々がどんどんお金を使わなければならないという事は分かっておりますけど、でもねぇ・・・
さて、春休みにオススメの名作映画特集ですが、今回はちょいと気分を変えてテレビアニメにいたします。皆さんよくご存知の「トムとジェリー」です。
いまテレビアニメと申しましたけど、ウィキペディアによると元々「トムとジェリー」は、劇場映画のフィルム巻き戻しの時間つなぎ用に作られたアニメだったそうです。
そういえば昔の映画館では映画と映画の間に短い白黒のニュース映像なんかをよく流していましたねぇ・・・ちっとも面白くないやつを・・・
あんな感じで「トムとジェリー」が流されていたのなら、お客さんはさぞ喜んだでしょうね。たぶん目的の映画よりオマケの「トムとジェリー」の方を気に入った人が大半だったろうと思います。だって、チャップリンの映画と同じくらい素晴らしいですものね、「トムとジェリー」は。芸術品ですね、これは。
この偉大なアニメ「トムとジェリー」を生み出したのが、ウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラという二人のアニメーターです。
「トムとジェリー」の第1作目が作られたのは、何と戦前の1940年というから、もうビックリですね。そんな昔に、こんなにクオリティが高く、こんなに感性が新しく、こんなに心の豊かなアニメ作品を作り得たのですから、ハンナ=バーベラは間違いなく天才でした。
宮崎アニメがどうのこうのと論じる人がおりますけど、「トムとジェリー」に比べたら幼稚園レベルですな、あんなもの。
アニメーションの命は絵が動くことですが、「トムとジェリー」みたいにスピーディに、大胆に、イマジネーション豊富に動くアニメが他にあるでしょうか? 今に至るまで世界のアニメーションは、ウォルト・ディズニー作品と「トムとジェリー」を超えられずにいます。
ただ、「トムとジェリー」の作品中にはハンナ=バーベラ以外のアニメーター作品も混じっていて、それらの作品は面白くないし、絵のタッチも好きじゃないんですよねぇ。「トムとジェリー」は、やはりハンナ=バーベラ作品じゃないとあきまへんな。
他の人のはまったくダメ。新しく作られたのもダメ。そうそう、下の写真の絵のタッチのハンナ=バーベラの手による「トムとジェリー」しか認めませんね、ワタクシは。
ハンナ=バーベラは「トムとジェリー」の後、自分たちのプロダクションを作り、良質のアニメ作品を世に送り出します。
「フランケンロボ」、「スーパースリー」、「宇宙怪人ゴースト」、「大魔王シャザーン」、「宇宙忍者ゴームズ」、「チキチキマシン猛レース」・・・あら、私が子供のころ夢中になって観ていた海外アニメは、みんなハンナ=バーベラ・プロダクション作品じゃないのよ。お世話になりました、ハンナ=バーベラ先生。
日本では1964年にTBSで「トムとジェリー」の放送が開始されました。ですから、おそらく私は初放送の時から「トムとジェリー」を観ております。
その後、「トムとジェリー」は夕方などに何回も再放送されて、私も何回も観ましたけど、何回観ても面白く、飽きることはありません。ずっと魅了されっぱなしです。
ただし、現在NHKで再放送されたり、DVD化されているのは、このTBS版じゃないんですよね。
細かい事を言うようですけど、「トムとジェリー」はアニメ「いなかっぺ大将」で西一の声を担当した八代駿さんがトムの声で、アニメ「一休さん」で一休の声を担当し「どろろ」や「ムーミン」のテーマソングを歌った藤田淑子さんがジェリーの声で、コメディアンの谷幹一さんの優しく暖かいナレーションが付いていて、真ん中作品があるTBS版じゃないと嫌だなぁ。
「ネズミだって生き物さ。ネーコだって生き物さ。トムとジェリー、仲良くケンカしな♪」
という三木鶏郎作詞・作曲、梅木マリとフォーコインズによる日本版オリジナル主題歌も無いと寂しいですしね。
このTBS版、つい1年ほど前まではユーチューブにたくさんアップされていたのに、このあいだ検索したらそのほとんどが削除されておりました。けしからん。日本文化の向上のためだ、ケチケチすんな! 声を大にしてそう言いたいです、私は。
では、ぜんぶ面白いハンナ=バーベラ版「トムとジェリー」ですけど、その中でも特に私のお気に入りのエピソードをいくつかご紹介いたしますね。
「台所戦争」
いつも腹ペコで、まだおむつが取れないジェリーの従弟の子ネズミ・ニブルスとジェリーが、テーブルの上のごちそうを狙います。それを阻止しようと奮戦するトム。
トムの尻尾の先にロウソクの火が付いて、しばらくブスブスとくすぶっていたと思ったら、ボッと一気に燃え上がってトムが真っ黒になるというギャグが大好きでした。ハシゴでも同じパターンがありましたね。秀逸です。
「ごきげんないとこ」
トムに苛められて困っていたジェリーは、従兄のマッスルに助けを求めます。このマッスルがものすごく腕っぷしの強いネズミだったから、さあ大変。トムさんはピンチに。
「人造ネコ」
「トムとジェリー」ではお馴染みの太った黒人の家政婦さん。顔を映さない演出がセンスいいですよね。
彼女は、なまけ者で役立たずのトムの代わりにしようと、ロボットネコを購入する。
ロボットネコを初めて見た時のトムの「ウォーホッホ」という(吹き替えじゃなく)英語の笑い声が何とも可笑し。
他にもトムは痛い目にあったとき「アアアアーーーーッ!」と絶叫したり、「ウホ、ウホ、ウホ」と痛がったりするのですけど、この部分だけ吹き替えじゃなく英語の原音を使っているんですよね。それがたまらなく可笑しくて、私は大好きでした。
「ピアノコンサート」
コンサートホールで華麗な演奏を見せるピアニストのトム。しかし、トムが弾くピアノはジェリーの寝ぐらだったから、さあ大変。目を醒ましたジェリーのいたずらが始まる。
「ブルおじさん」
ブルドックのスパイクの足に刺さった画鋲を抜いてあげたジェリー。スパイクは感謝の印に鈴を渡し「困ったことがあったら、この鈴を鳴らしてね。そうすれば、すぐに助けに行くからね」と言う。トムに襲われそうになると鈴を鳴らすジェリー。たちまちスパイクが現れ、トムをやっつける。だが・・・
鎖に繋がれたスパイクがワンワンと激しく吠える口先に、トムが木の棒を差し出すとたちまちそれがバットに彫り上がり、そのバットでスパイクの頭を殴るギャグが大好きでした。
それから、この回には出ませんでしたが、他の回に登場するスパイクの息子、タイクがとても可愛かったです。
他に「トムとジェリー」の登場キャラでは、トムの恋敵となるノラ猫のブッチがやさぐれていて、いい味を出していました。
そのブッチとトムが求愛する可愛い子ちゃんの白ネコも良かったです。
トムを自分の母親と思い込んだアヒルの子供も可愛かったです。
ギャグでは、どの話か忘れましたけど(真ん中作品だったかもしれません)、線路の前に来て右側を見ると遥か遠くまで列車の姿は見えない。左側も同じ。それで安心して線路を渡り始めた途端、右側から猛スピードでやって来た列車に轢かれ、それが通りすぎるや今度は左側から猛スピードでやって来た列車に轢かれるというギャグが大好きでした。
それから、「トムとジェリー」の舞台となる大きな屋敷、芝刈り機で芝を刈る広い庭、プールやテニスコート、冷蔵庫の中のでっかい肉、ラグビーボールみたいな細長い形のスイカ、穴のあいたチーズ、パイやケーキ・・・これらは豊かなアメリカの象徴であり、昭和40年代の日本人の憧れでした。
だって、あまりにも生活のレベルが違いすぎましたものね、当時の日本とでは。
「トムとジェリー」や「奥さまは魔女」に登場するアメリカの一般家庭の姿は、あの頃の私たちにとっては、まるで夢のような光景だったのです。
TBS版「トムとジェリー」は30分番組であり、最初と最後の約10分間に「トムとジェリー」を流し、真ん中の約10分間には別のアニメを流していました。それが「真ん中の話」とか「真ん中作品」と呼ばれるものでして、これまた素晴らしく面白い作品が揃っておりました。
特に犬のスパイク(「トムとジェリー」に登場するブルドックのスパイクとは別)が出る作品がお気に入りです。
「冬眠中はお静かに」
雇い主である熊が冬眠している間、絶対に音を立ててはいけないと命じられたスパイク。しかし、スパイクの仕事を横取りしようと企むビーグル犬が、様々ないたずらを仕掛けてくる・・・
ほとんど古典落語レベルの完成度に達している爆笑まちがいなしの名作です。
「逃げてはみたけど」
終身刑を言い渡されたスパイクは、スプーンで穴を掘って刑務所を脱走する。ところが、隠れた場所が刑務所長が買ったテレビの中だったから、さあ大変。このピンチをどう切り抜ける、スパイク?
以上、可愛くて、楽しくて、心が豊かになる「トムとジェリー」のお話でした。
また、そのうちユーチューブにTBS版がアップされると思いますから、そうしたらぜひご覧になってくださいね。「真ん中作品」の方は再びアップされていたような・・・
史上最高のアニメです、「トムとジェリー」。