今日、参議院議員選挙のハガキが届きました。来月の21日(日)投票ですか。
でも、「ここに入れたい!」という政党が無いんですよね。維新の会やみんなの党にはガッカリだし、民主党は問題外だし、社民党なんか「まだあったの?」という感じでしょう? 結局は自民党しかないんですよね。
先日の都議選では共産党の票が伸びたとか。どの政党にも投票したくない気分のときは、決まって共産党の票が増えるんですよね。今回はおいらも共産党にでも入れようかな・・・いやいや、共産党なんかとんでもない。大嫌いな中国や北朝鮮と同じ政治体制を目指す奴らなんかに、おれの大切な一票をやれるもんか。バカめ。ふん。
ということで、じめじめした梅雨の時期におくる、私の大好きなセクシー系の映画特集の第7回目(当初の予定では5回で終わるはずでしたのにね。トホホ・・・)、今回ご紹介するのは鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」(1980)です。
好きだなぁ、鈴木清順監督。作品はもちろんですけど、ときに役者として飄々とした名演技をみせたり、弟が元NHKアナウンサーの鈴木健二だったりという不思議なところが好きです。軽やかで、自由自在で、まるで仙人みたいな人ですね。
鈴木清順監督といえば「肉体の門」(1964)や「けんかえれじい」(1966)という傑作もありますけど、まずは何といっても「殺しの烙印」(1967)。
殺し屋同士が殺しの世界のナンバーワンの座を争うというヘンテコリンな映画です。
私はこの作品を高校生のとき初めて観ました。たしか土曜日の午後だったと思うのですが、たまたまテレビをつけたところ、女性が裸(いま思えばそれは上の写真の向かって右側に写っている小川万里子さんの裸でした)でらせん階段をうろうろする白黒の奇妙な映画を放送していたのです。当時のテレビは昼間から平気でこういうのを流していたんですね。いい時代だったなぁ・・・
女性のヌードに飢えていた高校生のワタクシが食い入るようにこの映画を観たのは言うまでもありません。
やがて、謎の美女役で、真理アンヌさんが登場します。
ウギャー、好きです、愛してます、恋してます、真理アンヌさん!
日本人とインド人のハーフのエキゾチックな美女で、私が小さい頃は「ウルトラマン」や「ウルトラセブン」、「ワイルド7」といった子供番組にもちょくちょく出演なさっていました。
ちなみに、「ウルトラセブン」でひし美ゆり子さん演じるウルトラ警備隊の女性隊員の名前は《友里アンヌ》というのですが、これは脚本を書いた金城哲夫氏が真理アンヌさんの大ファンだった為こうなったそうです。
ま、それはともかく、「殺しの烙印」は作り手の才気が溢れた面白い作品なのですが、正直言って内容がよく理解できない作品でもありました。
この意味不明な作品に激怒した当時の日活社長は
「わけのわからない映画を作ってもらっては困る!」
と言って清順監督をクビにします。
そういうわけで、しばらくのあいだ映画作りから離れていた清順監督の本格的な映画界復帰作となったのが、この「ツィゴイネルワイゼン」なのです。
《ツィゴイネルワイゼン》というのはサラサーテが作曲したバイオリン曲です。サラサーテ自身の演奏を収録したこの曲のレコードに録音されたサラサーテのつぶやき。いったい彼は何と言っているのだろう?
そんなところから大正時代を舞台にしたこの物語が始まるのですが、内容は私にもよく分かりません。清順監督は本作のコンセプトをこう語っています。
「今度の映画は、生きている人間は本当は死んでいて、死んでいる人間は本当は生きているという、一種の怪談です。情念や因縁は何ひとつ無い、現代のノッペラボウな怪談を、やさしく、面白く、極彩色の娯楽映画に仕上げてみるつもりです」
この言葉通り、どこまでが夢で、どこまでが現実か分からない、シュールで摩訶不思議な物語が始まります。ですから、この映画は意味を分かろうとするのではなく、レネの「去年マリエンバートで」(1961)のように、不思議な世界を楽しむ映画なのでしょうね。
大谷直子さんが、この不思議な作品に、エロティックな力を与えています。
私のブログでこれまで何度か書かせていただきましたが、大谷直子さんくらいエロスを感じさせてくれる女優さんはおりませんよね。彼女の場合、内面からエロスが滲み出てくるという感じなんですよね。
素晴らしい・・・欲情する・・・直子さんの白い肌・・・こんにゃくをちぎる細い指・・・もうダメ・・・ハァ、ハァ・・・
それから、前にもいちど書きましたけど、映画監督の藤田敏八さん(上の写真の男性)が、直子さんの相手役を好演していらっしゃいました。
本作は、普通の映画館ではなく、この作品のため特別に作られた半円形のテントドームの中で、まるでアングラ演劇を観劇するようなイメージで映画を観る「シネマ・プラセット」という方式で上映されました。この方式は、物珍しさも手伝って、大成功しました。
仕掛け人はプロデューサーで劇作家でもある荒戸源次郎氏。
「(秘)色情めす市場」(1974)の記事の中で、出演者のひとり夢村四郎さんがどういう経歴の人か分からないと書きましたが、あとで判明したところでは、彼は荒戸さんが主宰する劇団「天象儀館」の看板役者さんでした。ちなみに夢村さんも「ツィゴイネルワイゼン」に出演しています。
大谷直子さんと並ぶ本作におけるエロスの女神が大楠道代さんです。
この方はもともと安田道代といって、「痴人の愛」(1967)や「セックス・チェック 第二の性」(1968)といった作品で知られる大映のセクシー女優さんでした。それが結婚して大楠姓になり、久しぶりに本作で銀幕に登場したのですが、この結婚は正解でしたね。大楠という姓も良かった。これによって存在が新鮮になりましたものね。
当時、私などは大楠さんのことを、初めてお目にかかる人のように思いましたもの。テレビの時代劇などでよく見かけていたはずなのに。髪をおかっぱにした大楠さんは、とてもステキした。
この大楠さんのエロスを全面的にフィーチャーしたのが、泉鏡花の小説を原作にした清順監督の次回作「陽炎座」(1981)です。
これまた「ツィゴイネルワイゼン」に勝るとも劣らぬ傑作です。わけの分からなさも勝るとも劣りませんけど・・・
「三度びお会いして、四度目の逢瀬は恋になります。死なねばなりません。それでもお会いしたいと思うのです」
・・・と、まぁ、こんな感じで夢かうつつか幻か分からない物語が続きます。シュールです。幻想的です。映像美に溢れています。でも、よく分かりません(笑)。
主役の松崎(演じるのは松田優作)は、囃子の音に誘われて、ある芝居小屋へとたどり着く。そこでは子供たちによるお芝居がおこなわれている。
大入道に扮した子供が
「うしみつの鍾を待ちわびたわい。こりゃ、雪女、酌をしろ」
と言うと、雪女役の女の子が
「あーい」
なんて返事をする。可愛い。
その芝居をぼんやり眺めているうちに、やがてそれが自分と品子(大楠道代)の話だと気づく松崎。すべては妖怪たちによるたくらみだった。それに気づいた時、芝居小屋は一瞬にして廃墟と化す。
このラストは観る者にカタルシスを与える素晴らしい名シーンです。
今回ご紹介した「ツィゴイネルワイゼン」と「陽炎座」は、女性の裸や性交シーンがふんだんに登場する、エロをメインにした映画ではありません。
しかし、他のどんなエロ映画よりも色っぽく、観終わったあと妖しい気持ちにさせてくれる作品です。まるで高級酒のような上質のエロスを味わせてくれる映画ですね。
この鈴木清順監督の最高傑作、「ツィゴイネルワイゼン」と「陽炎座」。どちらもちょっと長いけど我慢して最後まで観てくださいね。必ずや深い満足が得られますよ。