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今東光の言葉

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 本日(17日)は、いよいよ大阪都構想の是非を問う住民投票日ですか。大阪市民ではない私には関係ありませんけど。
 ただ、大阪大好き人間のワタクシには橋下さんの主張がひどく時代遅れなものに思えますし、彼のおこなう改革は大阪市を地盤沈下させるだけのように思えるのですけどね。
 ま、そこらへんは大阪市民の良識ある判断にお任せいたしますけど・・・

 ラスト2回となった私のこのブログ。表向きは単に好きな文学作品や映画をご紹介するという体裁をとっておりますけど、しかしながらその実態は私という人間のパーソナリティを皆さんに押し付ける、なんちゅーか極めて我意の強い、自己中心的な、いつでもわたしわたしの、自分しかいないブログなのであります。
 ですから、各記事は独立しているものの、全体を通して読んでいただければ私という人間が自然と浮かび上がって来る仕組みになっておりますし、そのためグルグルと何回も同じ話題を繰り返している部分が少なからずあります。

 今回取り上げる今東光和尚も、当ブログではこれまで「極道辻説法」、「仏教の話その3」、「マルクス兄弟」等の記事に登場いたしましたけど、私という人間のパーソナリティ形成に最も大きな影響を与えた人物でありますので、最後の最後にもう一度おさらいをさせていただこうと思うわけです。

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 今東光(こん とうこう)。
 天台宗大僧正にして直木賞作家。元参議院議員。中尊寺貫主。
 実弟は、これまた直木賞作家で文化庁長官となった今日出海(こん ひでみ)。お父さんが船乗りだったせいか「東光」に「日出海」なんて、兄弟揃って海を連想させるしゃれた実名を持っておりますね。

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 東光和尚は、旧制中学退学後(!)、画家になろうと思って東京へ出てきました。
 その当時、同じように画家になろうと競い合っていた友人の一人が、後に大画家となった東郷青児です。東郷先生は東光和尚の葬式で涙ながらに「十七歳の東光ちゃんは・・・」と弔辞を読まれました。
 ちなみに東郷青児の絵はこんな感じです。マリー・ローランサンの亜流みたいですね。私は俗っぽくて嫌いです。

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 東光和尚にもそうとう絵画の力があったのでしょうけど(後に二科展入選)、たまたま知り合った一高生・川端康成と意気投合し、一高の寮に潜り込んで夜な夜な文学や芸術について熱く語り合っているうちに絵画より文学の方へ興味が移ったみたいです。
 川端康成とは生涯の友となります。

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 川端たちが一高から東大へ進学すると東光青年も東大へ通い始め、学生でもないのに東大の講義を受講していたそうです。
 この当時、芥川龍之介や谷崎潤一郎に可愛がられ、

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 また、宇野千代さんと恋人関係にあったとか。すごいなぁw

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 川端康成と共に第6次「新思潮」によって文壇デビューを果たした東光和尚は、作品を発表する傍ら雑誌「文芸春秋」創刊に関わる等、新感覚派の作家として大活躍していたものの、菊池寛とのケンカが原因で文壇を去り、出家する。

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 それから約30年後、「お吟さま」で直木賞を受賞して、奇跡の文壇復帰。その後はお亡くなりになるまで、作家として、政治家として、宗教家として、そしてタレントとして、文字通りの大活躍でした。
 瀬戸内寂聴さんが東光和尚の弟子だという話は以前書いた通りです(「寂聴」という名前は東光和尚の法名「春聴」の「聴」の字をもらってつけた)。

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 東光和尚の小説には映画化された作品が多く、その中でいちばん有名なのは山崎豊子さんの追悼記事でご紹介した勝新太郎さんと田宮二郎さんが主演した「悪名」シリーズ(1961~)です。

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 このシリーズの中の勝さんがカレーライスを食べるシーンが大好きです、可笑しくて、可愛くて。ものを食べるシーンには相当のこだわりがありましたね、勝さんは。

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 他に野川由美子さん主演の「河内カルメン」(1966)という作品もありました。

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 それから私が高校生だった1978年に「お吟さま」が映画化されました(二度目)。
 主演は、当時のトップ女優、中野良子さん!

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 当ブログではこれまで「NHK大河ドラマを彩る女優たち2」、「NHKの昔の番組が観れない件2」、「グラフNHKその9『天下御免』」、「気になる女性たち3(昔のいい女篇)」、「セクシーな絵画」、「素晴らしき角川映画」、「記憶に残る本(海外文学篇その2)」等の記事で中野良子さんの魅力をさんざん語ってまいりましたけど、今回もやりまっせー(苦笑)。
 美しすぎます、中野良子さん。

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 お若い頃のお写真も初々しくて素敵です、中野良子さん。

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 ラフな普段着姿もいけてます、中野良子さん。

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 大好きです。永遠に愛しています、中野良子さん!

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 ・・・えー、恒例の中野良子さんコーナーが終わりましたところで(汗)、東光和尚に関連した話をもうひとつ。
 「続・極道辻説法」収録の「和尚独白」より。

 ・・・オレはずいぶんいろんなことやってきたが、昔、新聞社の社長もやったことがあるんだ。仏教関係の小さな新聞社でね、つぶれそうになって頼まれてさ。広告というのが、墓石だとかお線香だとか。これじゃ金にならないからつぶれるわけだ。そこでまず第一にやったことが、編集長をはじめ社員全員に広告取りをさせてね。編集の野郎ども、大騒ぎしやがった。
 それから、オレが目をつけていた新聞記者に長編小説を連載させた。
「今先生、とても無理です。まだ短編しか書いたことないんですから」
 と尻ごみする奴を、
「長編だって短編だって変わりゃしねえよ。ただし原稿料はオレのポケットマネーから出すからたいしてやれない。その代わり、好きなこと書いていい。また何年続いてもかまわない」
 その小説が終わった時、オレは講談社に頼みこんで本にしてもらった。それが直木賞に選ばれてな。それが司馬遼太郎よ・・・

 司馬遼太郎のデビュー作「梟の城」は、こうして世に出たのでした。

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 もう一人、東光和尚と仲の良かった作家が、「眠狂四郎」シリーズの柴田錬三郎です。

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 その柴田先生の推薦で始まったのが、雑誌「週刊プレイボーイ」誌上で1973年にスタートした若者向けの人生相談コーナー「極道辻説法」であります。
 私たち当時の若者は、「極道辻説法」で初めて今東光の存在を知り、東光和尚の人間的魅力にメロメロになったのです(詳しい内容が知りたい方は当ブログの記事「今東光『極道辻説法』」をお読みくださいね♪)。

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 「極道辻説法」で挿絵を担当していた藤英毅先生は、東光和尚に命名してもらった(羨まし!)風祭竜二という名前で切画作家として現在も活躍なさっております。
 風祭先生は私たちと同じヤフーブログに「切画師風祭竜二の世界」というブログを掲載していらっしゃいますので、興味のある方は覗いてみてください。
 初めて東光和尚に会った時、風祭先生は和尚から
「君も極道だね」
 と言われたそうです。
 風祭先生がきょとんとしていると
「好きな絵を描き、好きな事をして生きていくこと。極めた道を進む。これ即ち極道者なり」
 東光和尚はそう言ったそうです。カッコいいわぁw

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 しかしながら、「極道辻説法」は東光和尚ひとりの力で出来上がっているわけではありませんのでして、東光和尚がしゃべったテープを文章に起こした清水聡(後の官能小説家・蘭光生)先生の筆力があの魅力的な語り口調を生み出したのでしょうし、また担当編集者だった島地勝彦氏の力も大きいと思います。「和尚前白」などは、東光和尚がしゃべりそうな事を、島地さんが勝手に想像して書いたそうですから。
 その島地さんが、「毒舌仏教入門」という本の中で、東光和尚との楽しい思い出をエッセイに書いていらっしゃいます。
 その中から、今回は「ロマネ・コンティには気ィつけや事件」をご紹介いたします。

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「シマジ君や、いつも君にばかりご馳走になっているが、明日は昼メシをオレが奢ろ。ちょっとしたアブク銭が入りましたんでな」
「喜んでまいります」
「たしか、君はロマネなんとかゆうワインが飲みたいとか言うてたな。飲んだらええで。大金が入ったんや。こういう金はパッと使おうと思てな」
「本当ですか。うれしいですね、先生」
 十六年も前のことである。さすがの贅沢好きの私も、ペトリュースはおろかロマネ・コンティなど見たこともなかった。翌日ハイヤーを仕立てて、私は先生を迎えに行った。
 よく行く銀座の某フランス・レストランに入ると、「今日はオレが払うからな」と、再度、念を押された。
「光栄です」
「ロマネなんとかいうのを飲みなさい」
「ありがとうございます」
 ロマネ・コンティは、さすがにワインリストには載っていなかった。ソムリエを呼んで尋ねると「一本あります」と言う。
 ソムリエは、うれしそうにロマネ・コンティを、そっとパニエ(籠)に入れて持って来ると、ダイナマイトの信管を抜くような顔をして、神妙に抜栓した。
 えも言われぬ香りがテーブルの上に漂った。私は生唾を呑み込みながら、しばし待った。
「どれどれオレにも一杯注いでくれ」と大僧正。ひと口飲むと、先生は「これが世界最高のワインという奴かい」とご満悦であった。
 鴨のオレンジ煮かなにかを食べながら、グラン・ヴァン(最高のワイン)をほとんど私ひとりで丁寧に飲んでしまった。いいワインは毛細血管のすみずみまで流れるように届き、気持ちよく酔いがジワァッとまわってくるものだ。私はひとり悦に入り、しばしぼうっとしていた。
「勘定書を持って来てくれ」と今先生がウェイターに声をかけた。四角のプレートに載った勘定書を見ながら、先生はご機嫌で一万円札を三枚置くと「お釣りはいらん」と言われた。すると、ウェイターがもじもじしながら、申し訳なさそうに告げた。
「先生、あのう、たいへん失礼ですが、ひと桁お間違えでは・・・」
「うん!?」と言って、勘定書を見直してから先生は、今度は憮然とした表情で、一万円札を二十五枚その上に追加された。
 しばし沈黙が流れた。
 釣りが来ると、今度は丁寧に受け取られたが、それまで上機嫌だった大僧正は、別人のように寡黙になってしまった。
「先生。今日のロマネ・コンティの味は一生忘れませんからね」と、私はハイヤーのなかで言った。
「うん」・・・先生はムッとした表情で、そう答えただけだった。
 部屋まで送り、私は気持ちよく酔いしれながら会社に戻った。すると、すぐに柴田錬三郎先生から電話がかかってきた。
「おいシマジ、おまえ大僧正に、ずいぶんな悪戯をしたそうじゃないか。いましがた電話があって『シバレン、おまえもシマジのロマネ・コンティには気ィつけや』と言っておられたぞ。昼メシに三十万近くも払わせるなんて・・・
 今さんは下戸だから、ロマネ・コンティがどんなに高いものか全然知らなかったんだな。アハハハ。おかしい。それにしても、おまえもよくやるもんだ。アハハハ」
 それから何度か、ロマネ・コンティを飲む機会があったが、今東光大僧正にご馳走になったロマネ・コンティの味を凌駕したものはついになかった。
 あのときの、「まいったなあ」という大僧正の顔を思い出し、私は何度微苦笑したことだろうか・・・

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 これが本当にあった話なのか、それとも島地さんの創作なのか分かりませんけど、とにかく文章が巧みですよね、島地さんは。
 こういう人たちの才能が結集して「極道辻説法」という素晴らしい本が出来上がったのですね。

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 ところでワインといえば、やしきたかじんさんがふだん愛飲していたのは、カリフォルニアワインのオーパスワン。1本5万円くらいでしょうか?

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 このオーパスワンや今でも1本30万円くらいするロマネ・コンティのような高級ワインを飲むことなど貧乏人の私には一生ないでしょうけど、それでもワインはけっこう好きなんですよ。特に赤ワインが。
 私が愛飲しているワインは、グッと値段がお安くなりまして(苦笑)、1本500円程度のチリワイン「アルパカ」です。
 ある雑誌が開催した1500円以下のワインコンクールで白が1位。赤が3位になったワインです。
 なかなか良いワインなのではないでしょうか、これは。
 スーパー等で売っておりますので、興味を持たれた方はいちど飲んでみてください。私は美味しいと思いますよ。

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 他には、スペインワインの「王様の涙」(価格は1本600円ほど)も大好きで愛飲しております。
 もうデイリーワイン様々だわ(苦笑)。

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 さて、話を戻しまして、「極道辻説法」の中で「青春とは?」という質問に対し、東光和尚はこう答えております。
「十六、七の小僧っコにオレが説法したって、てめえにはわかりゃしねえな。わかりゃしねえけど、四文字だけ教えてやる。それは『遊戯三昧(ゆげざんまい)』という言葉だ。
 青春も人生も人間も、遊戯三昧の境地にならにゃあ、真の人生も人間も青春もわかりゃしねえんだ。だから大いに遊べ。遊戯三昧で、遊んで遊んで遊びつくせば、何かに突き当たってつかむものがある。
 とにかく人生は遊戯三昧よ、スポーツも恋愛も勉強もな。それに没頭しつくして、とことんやれば必ず何かがある」

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 上の写真は先ほど登場した島地勝彦さんに贈られた東光和尚の書(達筆ですよね)です。
 東光和尚は「遊戯三昧」をモットーにして人生を生きられました。
 島地さんに和尚はこう言ったそうです。
「人生は冥土までの暇つぶしや」
 所詮、人間の一生なんて、死ぬまでの時間を退屈しないよう暇つぶししているだけだ。その程度の意味しかない空虚な代物だ。だが、逆にそれだからこそ、遊戯三昧の境地になるくらい何かに没頭しろ。徹底的にやり尽くせ。そうして初めて無意味だった人生に意味が生じる・・・
 東光和尚は私たちにこうおっしゃりたいのではないでしょうか?

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 それでは「最後の極道辻説法」から東光和尚の言葉をもうひとつ引用して、今回はおしまいとさせて頂きます。
 次回はいよいよ当ブログの最終回です。およよ(涙)。

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「諸君、なんでもやりたいことを大いにやるこった。人生とは、なにもやらない虚無よりも、たとえ失敗しても傷心の方がはるかに貴いものなのだから。
 空々寂々たる人生なんて糞くらえ、と思うべし」

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