今日でお盆休みも終わりだというのに、見上げればどんよりした曇り空。夏はどこへ行ったんだ?
さて、しかしながら学生はまだ夏休み中でしょうから、残り少なくなった夏休みの間に観ていただきたい映画ということで、今回は「スター・ウォーズ」を取り上げます。
「スター・ウォーズ」といっても何作もありますけど、私が言うのは1977年に制作され、日本では1978年の夏に公開された、いちばん最初の「スター・ウォーズ」、いわゆる「エピソード4 新たなる希望」というやつです。はっきり言って私は本作以外の「スター・ウォーズ」は認めません。
ちなみに、いま申しました通り、なぜか日本では「スター・ウォーズ」の公開が1年遅れました。ですから、テレビ「11PM」の映画コーナーや雑誌「ポパイ」などで「いまアメリカですごいSF映画が大ヒットしている」という情報は得ていましたが、本作は実物を拝見できない幻の映画となっていたのです、しばらくの間。
この「スター・ウォーズ」と、同時期に公開されたスピルバーグ監督の「未知との遭遇」(1978)の大ヒットによって世界的なSFX映画ブームが起きたのですけど、実は日本ではそれ以前から《宇宙もの》がブームになっていたんですよね。
そう、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の大ヒットによってです。
ヤマトのお陰で《宇宙もの》には慣れっこになっていたはずでしたが、本場ハリウッドからやって来た映像は、そんな我々の度胆を抜きましたね。
特に冒頭に登場する帝国軍の宇宙戦艦スター・デストロイヤーの巨大さに息を飲みました。
また、宇宙戦艦ヤマト等の日本のアニメでは、光線やらミサイルが出る場所(主砲など)が決まっているのに、スター・ウォーズの戦艦の場合、色んなところからピュンピュンピュンと弾が発射されるところが新鮮でした。
ストーリーはあらためて私が説明する必要もありませんわな。
遠い昔、銀河の彼方で起きた帝国側と自由を求めてそれに抵抗する共和国側の闘いを描いたドラマです。
ここで言う銀河というのは我々のいる太陽系がある天の川銀河のことでしょうか? それとも他の架空の銀河でしょうか? どうでもいい話ではありますけど。
監督はジョージ・ルーカス。
「アメリカン・グラフィティ」(1973)のヒットによりメジャー監督となったルーカスが、古き良きアメリカ娯楽映画の復活を願って制作したのが本作です。
結果的には、本作のあと量産された多数のSFX映画によって、パニック映画ブームが去って以降元気の無かったハリウッド映画が息を吹き返したのですから、まさにルーカスの思惑通りでした。
お陰様で映画全体がガキっぽくなってしまいましたけどね。
主要登場人物は上の写真の3人。
左からルーク・スカイウォーカー役のマーク・ハミル、レイア姫役のキャリー・フィッシャー、ハン・ソロ役のハリソン・フォードです。
このうちマーク・ハミルとハリソン・フォードはいいのですけど、レイア姫役のキャリー・フィッシャーに関して(?)マークが付くのは世界的な傾向です。私も同じ思いです。もう少し可愛い女の子はおらんかったのかい、ルーカスさん?
その他の登場人物としては、上記の三人を助けるジェダイの騎士の生き残り、オビ・ワン・ケノービを演じるのが、前回ご紹介した「戦場にかける橋」(1957)の名優アレック・ギネスです。彼が出演してくれたお陰で本作は安っぽくならずに済んでいます。
帝国軍の惑星型要塞デス・スターの司令官ターキン役は「妖女ゴーゴン」(1964)等ハマー・プロ制作のホラー映画でお馴染みのピーター・カッシング。
げろっと痩せていて、病的で、不気味で・・・いい味だしてますよね。さすが往年の怪奇スターです。
ハン・ソロの相棒の宇宙飛行士が身長2メートルを超すチューバッカです。
C-3POとR2-D2という仲良しロボットコンビも登場します。
ここらへんのキャラクター設定は、ジュディ・ガーランド主演のミュージカル映画「オズの魔法使」(1939)からヒントを得ています。
そして、日本の鎧兜とナチス・ドイツ軍のフリッツ・ヘルメットを合わせて作ったようなデザインの暗黒卿、ダース・ベイダー。
独特の呼吸音が特徴的でした。
帝国軍の兵士たちのコスチュームもイカしていました。
アメリカでいち早く本作を観てきた大橋巨泉さんが、彼の司会するテレビ「11PM」で、アメリカから買ってきた帝国軍兵士のマスクを披露していたのを、よく憶えております。
私も欲しかったです、そのマスク。
先程、本作は「オズの魔法使」にヒントを得ていると申しましたけど、ストーリー的には黒澤明監督の「隠し砦の三悪人」(1958)ほとんどそのままです。
なにしろルーカスは黒澤明の大ファンですからね。
「隠し砦の三悪人」を観るとよく分かるのですけど、ルークは三船敏郎さん、レイア姫は上原美佐さん、ハン・ソロは藤田進さん、そしてC-3POとR2-D2は千秋実さんと藤原釜足さんなんですね。もー、ビックリです。
ですから、オビ・ワン役は最初、三船敏郎さんにオファーがあったとか。ところが、三船さんは断っちゃったんですね、子供向き映画の話だと思って。これは失敗でしたね。三船敏郎のオビ・ワン・ケノービ・・・うーん、観てみたかった・・・
また、宇宙酒場のシーン(色んな宇宙人がお酒を飲んでいるこのシーン好き!)で、
ヤクザ者の宇宙人がルークに因縁をふっかけ銃を抜くや否やオビ・ワンにライト・セーバーで腕を斬り落とされるくだりがありますけど、ここは当ブログの記事「続・荒野の用心棒」でご紹介した黒澤監督の「用心棒」(1961)の1シーンからのいただきです。
ということは、あの腕を斬られた宇宙人はジェリー藤尾さんだったのか? そういえば顔が少し似ていたような・・・
話を「スター・ウォーズ」に戻しますね。
オビ・ワンたちジェダイの騎士(なんでも《ジェダイ》というのは日本語の《時代劇》からとったそうです)は、ライト・セーバーなるレーザー剣を武器とし、フォース(初公開時は《理力》と訳されていた)と呼ばれる超能力(なのか?)を持っています。
SFを極めると最後はフォースのような神秘的なパワーに行きつくものなのでしょうかね?
ちなみに、日本のアニメ「機動戦士ガンダム」は、早速ライト・セーバーをパクり、またニュータイプなるフォースに通じる神秘的な設定を登場させました。
ラストは共和国軍による帝国軍の惑星型要塞デス・スターへの総攻撃となります。
このデス・スター、とても巨大で近づくと表面は都市みたいになっているのに、なぜか上下の区別があり、宇宙船を収容する際は横から入れるんですよね。普通に考えたら、月面着陸のように、上から地表へ降りてくる形になるのではないでしょうか?
それから、もうひとつ、敵の宇宙船を引き寄せるトラクター・ビームのスイッチのところに「POWER」という英語の表記が付いていたのには閉口しました。ここは銀河の果てなんでしょう? 地球のお話ではないんですよ(後でこの部分は訂正されました)。
ルークの乗るXウィング・ファイターなどの戦闘機がデス・スターに襲いかかるのですけど、宇宙空間にウィングなんかいらないんですけどね。
しかし、このXウィング型の戦闘機は、さっそく日本のアニメ「ガッチャマン」の続編で、主人公のケンが乗る新型G1号にパクられておりました。いやーねぇ、もう。パクリばかりだわ(涙)。
また、これらの戦闘機は、なんと地上から直接宇宙空間まで飛んで行けるのですよね。すごいなぁ(笑)。
・・・と、さんざん悪口めいた事ばかり書いておりますけど、それでも狭い溝みたいなところを通ってXウィング・ファイターがデス・スターを攻撃するシーンには、手に汗を握りましたね。だって、そのような映像をそれまで観たことがありませんでしたので、当時の私たちは。思わず手に持っていたチョコ棒をかじるのを忘れて画面に見入っておりました。
「スター・ウォーズ」は世界じゅうで大ヒットしましたので、日本でもさっそく「宇宙からのメッセージ」(1978)という便乗SF映画が作られました。でも、東映で、しかも監督が《ミスター・ヤクザ映画》深作欣二ですもの、SF的センスのかけらも無い駄作でしたね。
本家「スター・ウォーズ」にも続編が作られます。
2作目「エピソード5 帝国の逆襲」(1980)、3作目「エピソード6 ジェダイの復讐(今は帰還に変わっている)」(1983)と回を追うごとに製作費はアップしていったのでしょうけど、それに反して内容はしょぼくなる一方でした。
そもそも、最初の「スター・ウォーズ」には、ピーター・カッシングを初めとする渋いおじさんたちがたくさん登場して、大人がおとぎ話を真面目にリアリスティックに演じているところが良かったのに、それをだんだんディズニー的な子供向けのファンタジー作品にしていったところが、まったくダメでしたね。
何を勘違いしたんだ、ルーカス親父は。
また、ルーカスは1997年、本作に新しい映像を付け加えた「特別篇」を発表しましたけど、これもダメ。ぜんぜんダメ。元のままの方が百倍良かったです。
そして、1999年以降に公開された「エピソード1 ファントム・メナス」以降の「新スター・ウォーズ」シリーズ。
すっかりお子ちゃま映画と化した「スター・ウォーズ」に憤慨した私は、本当の「スター・ウォーズ」、名付けて「アナザー・エピソード1」を書き上げました。
日本の映画会社は、ルーカスの許可をもらって、私の「アナザー・エピソード1」を映画化してくれないかなァ?・・・絶対に面白いんだけどなぁ・・・父と子の問題がテーマになっていてさ・・・結局、後にダース・ベイダーとなるアナキン・スカイウォーカーは、エミリー・ブロンテの小説「嵐が丘」のヒースクリフなのよね・・・