上海福喜食品による期限切れの肉の使い回し問題・・・チキンマックナゲットも一部が福喜食品製のものだったそうですね・・・美味しかったのに残念です・・・けっこう好きなんですよ、チキンマックナゲット・・・でも、あれだけひどい肉を使っておきながら、不思議な事にこれまで大規模な食中毒が発生したわけではないんですよね・・・今回の件も上海のテレビ局がスクープしなければ表に出なかったし・・・そう考えると人間の体って思った以上に丈夫なんですね・・・もちろん福喜食品がいけない事に変わりはないのですけど・・・
17日に発生したマレーシア機撃墜事件・・・おそらくロシアから地対空ミサイルの提供を受けたウクライナの親ロシア派兵士が誤って民間機を撃墜しちゃったのでしょうけど、ああいう紛争地帯の上空を飛ぶのは、やはり避けた方が良かったですね・・・今回のように誤ってミサイルが飛んで来ることがありえますからね・・・
パレスチナでもイラクでも中国でも紛争が起きて人がたくさん死んでいます。核兵器が抑止力となり大国間での全面戦争は起きずらくなっていますが、その代わり民族問題や宗教問題に端を発した局地的な紛争はこれからますます増え、泥沼化していくことでしょう。恐ろしい事です。
紛争の泥沼化といえば、私の若い頃はベトナム戦争が、まさにそうでした。アメリカはベトナムという泥沼にはまり、多くの若者を犠牲にした上に、国の威信を失ったのです。
そんなアメリカ人にとっては悪夢のようなベトナム戦争は、映画の世界では長いあいだ題材にされる事がありませんでした。しかし、ようやく1970年代末になって、ベトナム戦争を正面から描く作品が登場してきます。
それが「ゴッドファーザー」(1972)のフランシス・フォード・コッポラ監督による「地獄の黙示録」(1979)です。
原作はコンラットの小説「闇の奥」。かってオーソン・ウェルズが映画化しようとした作品です。
軍の命令に背きジャングルの奥地で自分の帝国を作っているカーツ大佐。そのカーツ大佐の暗殺を命じられたウィラード大尉は、ベトナム戦争真っ最中のジャングルの奥地へ、闇の奥へと向かう・・・というお話です。
カーツ大佐を演じるのは、マーロン・ブランド。本来は痩せている設定のカーツ大佐ですが、ブランドは丸々と太り、しかもスキンヘッドなので、まるでプロレスラーみたいです(笑)。
カーツ大佐を追うウィラード大尉を演じるのは、マーティン・シーン。主役としてはちょっとキャラが弱いかな? 当初はハーヴェイ・カイテルを起用する予定だったそうですけど、確かにハーヴェイの方が良かったですね。
他にはロバート・デュヴァル、ハリソン・フォード、デニス・ホッパーらが出演しています。
私はこの映画を公開時に劇場で観ました。当時は社会現象とも言えるくらいたいへんな話題作・問題作で、これを観ずに済まされるかといった雰囲気でした。
で、実際に観たところ・・・何じゃこりゃ?・・・さっぱり意味が分からないんですけど・・・たいして面白くもないしさ・・・という感想でしたね・・・トホホ・・・
2001年になってコッポラが本作の「特別完全版」というのを発表しましたけど、新たなシーンが加わったぶん余計に間延びして、さらに面白さが薄まった印象でした。
全体としては極めてつまらない映画なのですけど、部分的にはハッとするほど素晴らしいシーンがいくつかあります。
まずはベトコンの根拠地である村をアメリカ軍の戦闘ヘリが急襲するシーン。
海の彼方からワーグナーの「ワルキューレの騎行」を響かせてやって来たヘリがナパーム弾で村を焼き払います。ダイナミックで美しい名シーンです。
この作戦の指揮を執っていた隊長がたいへんなサーフィン狂で、戦闘中にも関わらずサーフィンをするシーンが可笑しかったです。
また、ジャングルの奥地で開かれるプレイメイトによる慰問ショーのシーンもとても印象的でした。
カーボーイハット姿のお姉ちゃんがそそりますよね・・・あはは・・・
それから、ザ・ドアーズの「ジ・エンド」をテーマソングに使うところが、また素晴らしいセンスでした。
ザ・ドアーズというロックバンドをご存知ですかね? 映画「ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間」(1970)の記事でご紹介したジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョプリンと並ぶ60年代ロックの大スターなのですけど。
とりわけボーカル担当のジム・モリソンの書く詩的・文学的・象徴的な歌詞が評判でした。現代のランボーと呼ばれていたのではないでしょうか? 確かに不思議なテイストの詩を書く人でした。
どんな詩だったかですって?
それでは当ブログの記事「スタインベックの怒りの葡萄」でいちどご紹介した高校時代の私の友人M君が訳したモリソンの詩をひとつご紹介いたしましょう。タイトルは「とかげの儀式」です。
脳の奥への道をつたい
苦悩の果てる地へもどる
雨がやさしく街に降り注ぐ
小川の迷路
その下に あの世の静かな方かな
岡のまわりに神経質な村人が住む
爬虫類の闊歩
化石と洞窟と冷気の高原
全ての家にかびがまたはえ
風はうず巻き
朝の中に封じ込められたいかした車
全てが眠っている
絨毯の沈黙 鏡の真空
義理の夫婦のベッドの下の盲目のほこり
椅子の中をのたうち
娘たちは高慢
乳首の瞳に精液がたまっている
待ち 給え
ここで虐殺があったのだ
ちなみにコッポラとモリソンはUCLAの映画学科の同級生だったそうです。
こんな風に素晴らしいシーンがいくつかありますし、またキレのいいセンスが随所に垣間見れるので、もっと面白い作品になってもよかったはずなのに、なぜか総合点は低いんですよね、この映画。
でも、妙な魅力があって、私はこの作品を嫌いにはなれません。
「地獄の黙示録」と同じ時期に、もう一本ベトナム戦争を描いた大作映画が公開されました。
それが、マイケル・チミノ監督の「ディア・ハンター」(1978)です。
ペンシルベニア州の田舎町の製鉄所で働く青年たち。彼らの趣味は山での鹿狩りである。そんな仲良しグループの中の3人、マイケルとニックとスティーブンがベトナム戦争に招集された。その結果、3人は心も体もボロボロになって・・・というお話です。
すなわち、本作は映画「我等の生涯の最良の年」(1946)や、
当ブログの記事「カルメン故郷に帰る」でご紹介した木下恵介監督の「二十四の瞳」(1954)に通じる内容の作品です。
もっとも迫力がぜんぜん違いますけど。
捕虜となった3人はベトナム兵にロシアン・ルーレットを強制されます。このロシアン・ルーレットのシーンは息が詰まる程の迫力です。ニックを演じるこの時のクリストファー・ウォーケンは、少し千原ジュニアさんに雰囲気が似ていますね。
そしてマイケルを演じるロバート・デ・ニーロの鬼気迫る名演技。すごすぎます。デ・ニーロ最高の演技ですね。これが役者というものです。
また、本作には当時売り出し中の若手演技派女優だったメリル・ストリープが出ています。すごい美人というわけではありませんけど、いい表情を見せてくれますよね、彼女は。
前半の壮行会のシーンで流れるのが、フランキー・ヴァリの「君の瞳に恋してる」。この作品の時代設定である1967年当時の大ヒットナンバーです。
後にボーイズ・タウン・ギャングがこの曲をディスコ調にアレンジして再び大ヒットさせました。
ベトナム兵がアメリカ人捕虜にロシアン・ルーレットをやらせた事実はありませんし、ロシアン・ルーレットのシーンは事実に基づかない完全な創作なのですけど、でもこれほどベトナム戦争という狂気を的確に表現したシーンは他に無いと思います。
「地獄の黙示録」がある意味ファンタジックにベトナム戦争を描いたのに対し、本作はもっとストレートに生々しく、それでいてあくまでもドキュメンタリーではなく物語として戦争の狂気を描いています。
大好きな映画です。まだ観ていらっしゃらない方はぜひご覧になってみてください。デ・ニーロとウォーケンの演技に圧倒されますよ。
さて、この他にベトナム戦争を題材にした映画では、オリバー・ストーン監督の「プラトーン」(1986)が良かったです。
主演は「地獄の黙示録」で主演を務めたマーティン・シーンの息子、チャーリー・シーン。
ところで、このチャーリーさん、本作の当時は「ウォール街」(1987)、「メジャーリーグ」(1989)、「ホット・ショット」(1991)と大活躍だったのに、その後のドラッグ漬けの日々で精神がぶっ飛び、仰天発言ばかりがクローズアップされるようになりました。
曰く
「俺にはトラの血が流れている」
だの
「俺は生まれついての勝利者。毎秒ごとに勝っている。居眠りしていてもジェット戦闘機並みの性能だ」
ですと。
ジム・モリソンも羨む詩的センスですな。あはは。