本日、参議院議員選挙が公示されました。
あまり盛り上がっておりませんけど。
今回の選挙の争点は、いわゆるアベノミクスを評価するか、このまま自民党に政権運営を任せることを承認するかという事なんでしょうけど、今のところ安部政権の経済政策はうまくいっておりますから、国民は承認するんでしょうね。その結果、投票率は下がるでしょうけど、自民党圧勝となるのでしょうね、おそらく。
そして、民主党や維新の会は消滅。いいことだ。ついでに社民党もかな? あはは。
さて、じめじめ、ムシムシした梅雨空の下におくる私の大好きなセクシー系映画特集も今回が遂に最終回、ラストにご紹介するのは勅使河原宏監督の「砂の女」(1964)です。
勅使河原宏と聞いてもご存知ない方が多いと思います。
仮屋崎省吾さんという人気のオネエ系華道家がおりますでしょう? 実は彼の師匠が勅使河原監督なのです。すなわち勅使河原さんは、映画監督でありながら、草月流三代目家元でもあったのです。
何ともまぁマルチなお方ですねぇ。
勅使河原監督の夫人が、女優の小林トシ子さん。
私のブログでもご紹介した木下恵介監督の「カルメン故郷に帰る」(1951)で、高峰秀子さん演じるリリー・カルメンの相棒、マヤ朱美を演じた人です。
記事の中ではご紹介しませんでしたけど、この作品には「カルメン純情す」(1952)というあまり知られていない続編があり、これがまた天才の仕事と呼べる、すんごい作品なんですよ。
「カルメン故郷に帰る」の方は、日本初のカラー映画作品として映画史にその名を残しておりますが、続編の「カルメン純情す」は地味に白黒。しかしながら、内容的には前作を遥かに超えるアバンギャルドさで、言葉では説明しずらいですけど、いま観てもビックリ驚く衝撃の作品となっております。
たしか高峰さんが「時代を先取りしすぎて、受け入れられなかった」という趣旨の発言をなさっていましたけど、もしかしたら現在でもこの作品には追いついていないのかもしれません。
カルメンと朱美のコンビも絶好調で、小林さん演じる朱美を観ていると、私なんぞはショーケン主演のテレビドラマ「傷だらけの天使」の水谷豊さんを連想したほどでした。
隠れた名作です。観ていない方は、ぜひ一度ご覧になってみてくださいね。唖然としますよ。
・・・話を勅使河原監督に戻しますね。
東京芸術大学の日本画学科を卒業した勅使河原さんは、華道の道を歩みながらも、当時の前衛芸術運動に関わり、そこで作家の安部公房や音楽家の武満徹と知り合います。
そして、旧知の仲である安部公房の小説を原作とする、それまでの日本映画には無い、独特の美的センスが光る、素晴らしい映画を作っていきます。
それが、「おとし穴」(1962)、「砂の女」、「他人の顔」(1966)、「燃えつきた地図」(1968)です。
このうち勝新太郎さんと渥美清さんが共演した「燃えつきた地図」は観ておりませんので評価できませんが、他の3作は間違いなく世界映画レベルの傑作でした。
「おとし穴」は、無人のゴーストタウンと化した町で殺された男の前に無数の人々が・・・そこは死人たちの世界だった・・・という当ブログの記事「ユーチューブで観た映画」でご紹介した「恐怖の足跡」(1962)にちょいと似た映画でした。
「他人の顔」は、工場の爆発事故で顔を失った仲代達矢さん演じる男が、平幹二郎さん演じる医者に精巧なマスクを作ってもらい、その結果生じた他人の顔で生きることへの葛藤や精神の錯乱を描いた作品で、白黒の画面が不気味な、そこらへんのホラー映画よりずっと怖い作品でした。
この作品では、「家政婦は見た」でお馴染みの市原悦子さんが、何と知恵遅れの少女(!)役で登場します。あの市原さんが・・・今では貴重な映像です。
貴重といえば、仲代さんの妻役で京マチ子さんが登場するのですが、彼女のヌード(!!)が拝めます。
京マチ子さんが脱いだなんて話は他に聞いたことがありませんから、これまたたいへん貴重な映像なのではないでしょうか?
それから、この作品には、顔にケロイドのある薄幸な少女役で入江美樹さんが登場します。
彼女は、この映画の後、世界的な指揮者である小澤征爾氏の奥さんになりました。ということは、すなわち現在、滝川クリステルさんと噂になっている(羨まし・・・)小澤征悦さんのお母さんということです。
ちなみに吉田拓郎さんが若いころ入江美樹さんの大ファンで、今でも時々使っている入江剣という別名は彼女の苗字から頂いたそうです。
そして、「砂の女」。
昆虫採集に来た男が、穴ぐらの底にある一軒家に閉じ込められ、村が砂に埋もれるのを防ぐため、村の女と生活を共にしながら砂掻き作業をやらされるという、何ともまぁ不条理なお話です。
男を演じるのは岡田英次さん。和製ジャン・マレーと呼ばれたこともある知的な二枚目です。
彼の出演作としては、古いところでは「また逢う日まで」(1950)が有名ですが、私的には「おかあさん」(1952)での香川京子さんに恋するパン屋の青年役が印象深いです。
そして、アラン・レネ監督の「二十四時間の情事」(1959)。この作品で岡田さんは国際俳優の仲間入りをしました。
女を演じるのは岸田今日子さん。
様々な作品に出演している大女優さんですが、私的にはテレビドラマ「傷だらけの天使」での探偵事務所の女ボス役が最も印象深いです。
そうじゃなかったら、やはりテレビドラマ「大奥」のナレーション。昔はみんながよく
「大奥では~」
と岸田さんの声真似をしたものです。あはは。
そんな岸田さんが、本作では、濃厚でじっとりとした大人のエロスを見せてくれます。
この作品のハイライトは、いちど海を見せてくれと頼む男に対して、村人たちが女とチョメチョメするところを見せてくれたら言うことを聞いてやると迫るシーンです。
男に当たるスポットライト。穴の上から好色な表情で囃したてる村人たち。高鳴る人々の心臓の鼓動とその心象風景を比喩して、仮面を被った男たちが和太鼓を激しく打ち鳴らします。
素晴らしい表現力! 素晴らしいイマジネーション力! お見事です!
勅使河原作品では、日本を舞台としているのに、日本的なじめじめ感がまるで無い、モダンで、無機質で、乾いたセンスが光ります。もしかしたら華道のわび・さびにも通じるセンスなのかもしれません。ちょっとスタンリー・キューブリックにも似ていますね。
この勅使河原監督の世界的な傑作を、ナタリー・ドロン主演の「新・個人教授」(1973)あたりと同じくくりで論じるのは心苦しい限りなのですが、鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」(1980)同様、極めて上質のエロスを堪能させてくれる官能映画の傑作のひとつに含まれると思いますので、どうかご容赦願いたいと思います。
日本が世界に誇る素晴らしい作品です。ぜひご覧になってくださいね。必修ですよ。