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Channel: 行政書士ふじまるの趣味のページ
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赤い砂漠

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 韓国済州島近くでの海洋事故。修学旅行の学生を乗せた大型客船が転覆して、映画「ポセイドン・アドベンチャー」(1972)状態になっていますけど、船が横倒しになってから完全に転覆するまでに2時間ほど余裕があったそうですから、その間に船から脱出することは出来なかったのでしょうか?
 今は一人でも多くの子供が無事に戻って来ることを祈るばかりです。
 
 中華料理人の周富徳さんがお亡くなりになりました。
 周さんは1990年代、テレビ東京「浅草橋ヤング洋品店」やフジテレビ「料理の鉄人」で大活躍した中華料理の名人です。
 「浅草橋ヤング洋品店」での、周さんが各国の料理人と対戦する《お料理湾岸戦争》シリーズや、「料理の鉄人」での《和食の鉄人》道場六三郎氏との対決などは、とても見ごたえがあって面白かったなぁ・・・そして、周さんの作るチャーハンや蒸しタマゴ・・・本当においしそうで、いちど食べてみたかったです。
 心よりご冥福をお祈り申し上げます。
 
 お亡くなりになったと言えば、小説「百年の孤独」で有名なコロンビアのノーベル文学賞作家、ガルシア・マルケスもお亡くなりになったんですよね。
 おそらく現代の小説家に最も影響を与えた作家であろうマルケス・・・豊かな想像力と活力によって《滅びゆくジャンル》と呼ばれていた現代小説を蘇らせたマルケス・・・マルケスのノーベル文学賞受賞によって、当時、世界じゅうでラテンアメリカ文学がブームになりました・・・かくいう私も大学生のとき「百年の孤独」を読んでガーンとやられた一人です・・・
 マルケスの小説をまだ読んだことの無い方は、ぜひ「百年の孤独」と「予告された殺人の記録」と「族長の秋」を読んでみてください。「純文学ってこんなに面白かったの?」と驚きますよ。
 
 さて、マルケスは映画好きで有名でしたけど、彼がまだ無名で映画のシナリオなどの勉強していた1960年代初めは、前衛的・芸術的映画が大きく花開いた時代でした。
 フランスには「気狂いピエロ」(1965)のジャン・リュック・ゴダール監督や「去年マリエンバートで」(1961)のアラン・レネ監督、「大人は判ってくれない」(1959)のフランソワ・トリュフォー監督らがいて、いわゆる彼らのヌーベルバーグが世界を席巻しておりましたし、イタリアにはフェデリコ・フェリーニ監督やルキノ・ヴィスコンティ監督、スウェーデンには「鏡の中にある如く」(1961)のイングマール・ベルイマン監督、スペインにはルイス・ブニュエル監督、日本には大島渚監督や「砂の女」(1964)の勅使河原宏監督・・・と映画が最高に熱い時代でした。
 
 そんな映画の熱い時代を担っていた一人が、今回ご紹介するイタリアのミケランジェロ・アントニオーニ監督です。彼は「情事」(1960)、「夜」(1961)、「太陽はひとりぼっち」(1962)の《愛の不毛三部作》によって現代人の心の闇に迫りました。
 
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 ただ、あんまり面白くなかったんですよね、私には上記の3作が。ピンと来ないというか、深さを感じないというか、あざといというか・・・後に作られた「欲望」(1967)もひどかったですし・・・
 
 2008年に志田未来ちゃんと山田優さん主演で「正義の味方」というテレビドラマを放送しておりましたけど、そのテーマ曲が「太陽はひとりぼっち」のテーマ曲にそっくり。
「あ、パクリだ!」
 と私なんぞは思ったものです。特徴的なメロディですからすぐに分かりますよね。「正義の味方」の曲を作曲したのは、当ブログの記事「ユーチューブでよく聴く曲(アーティスト篇)」でご紹介したピチカート・ファイブの小西康陽さん。才能のある人なのに、こんな疑わしい事をしちゃあきまへんなぁ。
 
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 と、まあ、このようにアントニオーニ監督をあまり評価しない私ですけど、それでも彼の「赤い砂漠」(1964)だけは大好きです。
 これは傑作。素晴らしい。
 
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 寒々とした工場地帯。
 通りに立ってパンを食べている男のところへ子連れの女がやって来て
「そのパンを売ってちょうだい」
 驚いた男が
「これは食べかけだし、同じパンがすぐそこの店に売っているよ」
 と言うものの、女は
「そのパンじゃないとダメなの」
 そう言って、強引に男からパンを買い取ると、勢いよくパンにかぶりつく。その表情、怖い・・・でも、美しい・・・
 
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 主人公は交通事故の影響で精神が少しおかしくなった女。彼女の心の荒廃を無機質で寒々とした工場の風景や計算して人工的に配置された色彩で表現していきます。とにかく、この作品の色彩感覚が素晴らしい。ゴダール監督が本作の色の使い方に影響を受けたと告白しているように、色彩の力をまざまざと感じさせてくれる作品です。
 
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 主人公の女を演じるのは、モニカ・ヴィッティ。アントニオーニ作品の常連であり、一時はプライベートにおいてもアントニオーニ監督のパートナーだった女優さんです。
 
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 このモニカ・ヴィッティがいいんですよね。虚無的な眼差し・・・ぷっくらと厚い唇・・・ちょうど山口百恵さんをもっと大人っぽく、色っぽくしたような感じの女優さんです。アントニオーニ作品の魅力の大半は、このモニカ・ヴィッティにあると言っても過言ではないでしょう。もちろん私も大好きです。
 
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 モニカの相手役はリチャード・ハリス。1970年代に「ジャガーノート」(1974)や「カサンドラ・クロス」(1976)等の作品で大活躍することになる知的マッチョです。
 後のリチャード・ハリスを知った上で本作を観ると違和感がありますよね、七三分けで真面目そうにしているハリスが。あはは。
 
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 ふだん娯楽映画ばかりご覧になっている人には、こういう映画は退屈に思えるかもしれません。ある程度年齢の行っている方は、今さらこのような作品を観る気にはならないでしょう。
 しかし、年齢の若い人は、自分に無いものを、鋭い感性を、異質な世界を体に吸収するために、こういう芸術的な映画をたくさん観るべきです。
 私なんぞも若い頃はゴダールやフェリーニやベルイマンなどの映画をたくさん観たものです。当時はレンタルDVDなんかありませんでしたから、雑誌「ぴあ」片手に早稲田通りの「ACTミニシアター」や池袋の文芸坐等を探し回って・・・そうそう、当ブログの記事「フリークスとピンク・フラミンゴ」でご紹介したアートシアター新宿の《黙壺子(もっこす)フィルム・アーカイブ》というのもありましたね・・・懐かし・・・
 
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 それにしても、演技とはいえ、気のふれた女って何でこんなに美しく見えるのでしょう? モニカ・ヴィッティの魅力にメロメロになる傑作です。ぜひご覧になってみてください。

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