前回ちょっと触れましたお笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さんが書いた純文学小説「火花」ですけど、「火花」が掲載された雑誌「文学界」が図書館に置いてありましたので、さささっとお茶漬けのように流し読みしてきました。
で、感想はと申しますと・・・そんなに悪くない・・・わりと良い感じ・・・文章がけっこう書き込んであり、真面目に純文学している態度が垣間見えて、少なくとも太田光さんの「マボロシの鳥」なんかよりはずっと好感が持てました。
ただし、新しい何かをもたらしてくれるタイプの作品ではないので、私には興味がありませんけどね。
それでも、サウナと風俗が大好きな西村賢太が書いた「苦役列車」だとか、石原慎太郎元東京都知事に噛みついていた田中慎弥が書いた「共喰い」みたいな、古くさくて、しかもクソ面白くない小説が芥川賞を受賞しているのですから、それなら又吉さんの書いた「火花」が芥川賞を取っても何らおかしくないんじゃね?、と私は思うのですけどね。
「又吉」から「有吉」という名前を連想したのですけど、1月9日の深夜にTBSで放送した「チーム有吉」という番組がすごく面白かったです。
《笑ったら即引退》という条件で、有吉さんたちが様々な芸人のライブやビデオを見せられるのですが、それがもう可笑しくて可笑しくて、久々に大爆笑させられました。この番組を制作したスタッフはたいしたものです。お笑いの切り口が鋭い。
「チーム有吉」は、むかし放送していた「クイズ☆タレント名鑑」のスピンオフ作品的な番組でして、私は元々の「クイズ☆タレント名鑑」も大好きでした。
なぜ終わっちゃったんでしょうね、こんな楽しい番組が。「芸能人!検索ワード連想クイズ」なんか毎回大爆笑だったのにね。また復活して欲しいわ、「クイズ☆タレント名鑑」。
・・・えー、ということで、今日の本題に入らせていただきます。
以前、アルフレッド・ヒッチコック監督の「鳥」(1963)を取り上げましたけど、《サスペンス映画の帝王》ヒッチコック監督にはまだまだたくさんの名作がありますので、今回はその中から私のお気に入りの作品をいくつかご紹介させて頂きますね。
ヒッチコック監督の映画はどの作品も抜群に面白いのですけど、ただ面白いだけでなく、気品と格調と芸術性が高く、画面全体に独特の清潔感が満ち溢れており、また人間心理の深層が鋭く描き出されているので、何回観ても飽きないんですよね。
そんなヒッチコック映画の、まずはイギリス時代の作品から。「サボタージュ」(1936)です。
表向きは善良な市民を装って生活しながら、裏では社会を転覆させる為の破壊活動を行っているテロリストの男。その妻が夫の裏の顔に気づき、しかも実の弟が死んだのは夫のせいだと思い、夫を殺害してしまう物語です。
シルヴィア・シドニー演じる妻が、さんざんためらった末に、食卓用ナイフで夫を刺すシーンは必見ですね。素晴らしいカット割り、素晴らしいモンタージュでした。
次は「バルカン超特急」(1938)です。これも面白かったなぁ。
列車内である老女と親しくなった若い娘アイリス。ところが、その老女が突然いなくなり、周囲の人間は老女なんか最初からいなかったと言う。アイリスは、パニックに陥りながらも、老女を探し始める・・・というジョディ・フォスター主演「フライトプラン」(2005)の元ネタのような作品でした。
ヒッチコックがアメリカに移って来てハリウッドで撮った作品では、まずは「レベッカ」(1940)。
ジョーン・フォンテイン演じる大金持ちの後妻が、夫の前妻レベッカは夫に殺されたのではないかと疑い、レベッカの亡霊に苦しんでいたところ、さらに後妻を快く思っていない家政婦長に精神的に追い詰められ・・・というお話です。
家政婦長を演じたジュデアス・アンダーソンが、とにかく怖い。彼女はシェイクスピア劇のマクベス夫人役で有名だった女優さんだそうです。納得です。
「海外特派員」(1940)もまた途轍もなく面白い映画でした。
スパイもののお話なのですけど、ラストの飛行機が海上へ墜落するシーンでは、リアリティを出すために本物の水を大量にぶちまけたとか。すごい迫力でした。
「逃走迷路」(1942)のラスト、自由の女神像上での追いかけっこにはハラハラしましたね。
飛行機との追いかけっこシーンが有名な「北北西に進路を取れ」(1959)では、自由の女神像ではなく、今度はワシントンら4人の大統領の顔が彫られたラシュモア山が舞台となり、ハラハラドキドキの名シーンが展開するんですよね。
このようにヒッチコック監督は観光名所を映画の舞台にするのが大のお得意でした。
ヒッチコック映画といえば美しいブロンドヘアーの美女が登場することで有名ですけど、それらブロンド美女の中でヒッチコック監督いちばんのお気に入りだったのが、後にモナコ公妃となったグレース・ケリーです。
きれいでしたよね、グレース・ケリー。エルメスの人気商品「ケリー・バッグ」は、このグレース・ケリーが商品名の元になっているのですよ。
グレースは「ダイヤルMを廻せ!」(1954)、
「裏窓」(1954)、
「泥棒成金」(1955)と・・・3本のヒッチコック映画に出演します。
しかしながら、モナコ公国でロケを行った「泥棒成金」の撮影中にレーニエ大公に見そめられ、そのまま結婚。秘かにグレースを狙っていたヒッチコックは泣いたとか。でも、ヒッチさん、どだいあなたじゃ無理なのよ、初めから。
その他のヒッチコック映画では、「サイコ」(1960)が有名ですよね。
ヒッチコック晩年の作品ではネクタイ絞殺魔を描いた「フレンジ―」(1972)も面白かったし、
遺作となった「ファミリー・プロット」(1976)も大傑作でした。
このようにヒッチコック監督は最後まで巨匠であり続けたわけです。そこが素晴らしい。
「ファミリー・プロット」には、「ひとりぼっちの青春」(1969)のブルース・ダーン、当ブログの記事「大好きな外国映画その1」でご紹介した「ロリ・マドンナ戦争」(1973)のエド・ローター、そして「イージー・ライダー」(1969)や「エアポート75」(1974)のカレン・ブラックという、私の大好きな役者さんが出演しています。
ヒッチコックとは関係ありませんけど、カレン・ブラックが出演した映画で私のお気に入りの作品をひとつご紹介するのを忘れておりましたので、ついでにここでご紹介いたしますね。
「カプリコン・1」(1978)です。
人類初の有人火星探査。しかし、出発直前に機械の不具合が発覚。計画を中止してメンツが潰れることを恐れたNASAは、秘密裡に映画スタジオで火星探査の様子を撮影し、実際には火星へ行っていないのに行ったことにするというお話です。
けっこう面白い映画でした。
さて、ここまで数々のヒッチコック映画をご紹介してきまして、どれも面白い作品ばかりなので全部観ていただきたいのですが、最後に私のヒッチコック映画ベスト3をご紹介したいと思います。
第3位は、以前ご紹介した「鳥」です。
そして第2位が、あまり有名な作品ではありませんけど、「見知らぬ乗客」(1951)となります。
テニスの花形選手であるガイは、浮気ばかりしている悪妻と離婚し、上院議員の娘アンと結婚したがっていたが、妻は離婚を拒絶していた。
そんなある日、ガイは電車内で知り合いになったブルーノに交換殺人の話を持ち掛けられる。俺が君の奥さんを殺すから、君は憎い俺の父親を殺してくれ。これなら、お互いが殺す動機の無い見ず知らずの人間を殺すのだから、警察に捕まるおそれは無いから、と。
ガイは冗談だと思って相手にしなかったが、ブルーノは実際にガイの妻を殺す。そして、ガイにつきまとい、早く俺の父親を殺せと要求する・・・というお話です。
アラン・ドロン主演「太陽がいっぱい」(1960)のパトリシア・ハイスミス原作で、ハードボイルド小説の巨匠レイモンド・チャンドラー脚本のこの作品は、ヒッチコック監督のスキの無い演出と相まって、観る者をグイグイ物語の世界へ引き込むパワーに満ち溢れています。
ラストの回転木馬のシーンの迫力なんかハンパじゃありません。
ブルーノを演じたロバート・ウォーカーの不気味なこと。
おススメです。ぜひご覧になってください。
いよいよ第1位です。ジャカジャカジャーン。私が選ぶヒッチコック映画の堂々第1位、それは「めまい」(1958)です。
犯人追跡中の事故で高所恐怖症となった元刑事のジョン(演じるのは「素晴らしき哉、人生!」(1946)のジェームズ・ステュアート)は、友人から妻のマデリンの行動を監視してくれと頼まれる。マデリンが何かに憑りつかれているらしいというのである。
マデリンを尾行した結果、ジョンはマデリンが自殺した彼女の先祖、カルロッタの亡霊に憑りつかれている事をつきとめる。
カルロッタのように自殺を図るマデリン。それを救出するジョン。そうこうしているうちにジョンとマデリンは次第に愛し合うようになる。
亡霊との決着をつける為、町はずれにあるカルロッタが自殺した教会へ向かうジョンとマデリン。
マデリンはジョンに「愛しているわ」と言ってキスをした後、高い鐘楼を駆け上がって行く。ジョンは後を追いかけるが、高所恐怖症のため足がすくみ前へ進めない。突然の悲鳴と共に窓の外を落下していくマデリンの姿。それを目撃したジョンは呆然としてその場から立ち去る。
その後・・・というのが、大まかなストーリーです。
教会でマデリンが鐘楼を駆け上がってから落ちるまでの一連のシーンは、これぞヒッチコック映画の白眉と呼べる、様式美に満ちた、芸術性の高い、素晴らしい名シーンです。
この作品には、ヒッチコック監督の他の作品と違い、エロティックな力がよく効いて、それが本作を非常に魅力的なものにしているのですが、そのエロティックな力の源泉は、マデリンを演じたキム・ノヴァクにあります。
キム・ノヴァク・・・好きだなぁ、この人。
出演作では「ピクニック」(1955)や「愛情物語」(1956)も有名ですけど、この「めまい」の時がいちばん美しかったです。さすがはヒッチコック、女性の魅力を引き出すのが上手い。
内側にどうしようもなく淫蕩なものを秘めているくせに、表面的には上品そうにしている、その不安定で危なっかしい美しさが何ともしれず良いし、また時に見せる少女のようなあどけない表情が可愛くて、これにもグッと来るんですよね。
白いコートを着ているシーンのキムは、セクシーで、凛とした気品があって、最高に美しかったです。
キムの眉毛って、子供が犬に悪戯してマジックで描く眉毛みたいですけど、当時はこういうのが流行りだったのでしょうか?
大好きなキム・ノヴァクですけど、「めまい」の後は出演作に恵まれなかったんですよね。
「めまい」後のキムの出演作で、私の記憶に強烈な印象を残したのは、テレビ映画の「魔のバミューダ海域」(1974)です。
中学生か高校生の時にテレビでいちど観たきりなのですけど、もう一度観てみたい作品です。すんごくおっかなかったですから。
また、ラクウェル・ウェルチ主演の「マイラ」(1970)の記事で一度ご紹介したテレビ「新・ヒッチコック劇場」の「小指切断ゲーム(別タイトル「南部から来た男」)」も、ものすごく面白かったです。
麗しき美女、キム・ノヴァクの魅力が全開の「めまい」・・・大おススメです。絶対に観てくださいね。面白さは保証付ですよ。